「前原代表の『(希望の党に)公認申請すれば、排除されない』発言について、小池代表は安保、改憲で一致する人だけを公認する、と。前原代表を騙したのでしょうか」
「排除されないということはございません。排除いたします」
これが9月29日の定例会見での、質問者の私と希望の党の小池百合子代表とのやりとりである。その後の選挙戦を決定づける、あまりに激しい「排除」という失言。希望の党を急失速させ、小池氏を奈落に沈めたひと言だと言っていい。
「なぜ自分で自分の首を絞めるような失言をするのか」と正直、思った。前原誠司代表が前日(28日)の民進党両院議員総会で説明したとおり、「排除しません。公認申請者は全員受け入れます」と小池氏も答えていれば、リベラル派が立憲民主党を結成することもなく非自民勢力が結集、安倍政権打倒を唱え、希望の党は飛躍的に議席を伸ばしたはずである。
千載一遇のチャンスを逃した主原因は、聞く耳を持たない小池氏の独裁的体質に違いない。私は希望の失速を期待して質問したわけではない。安倍政権打倒のためには、綱領に掲げた「寛容な改革保守」を実践し、「ハト派からタカ派まで包み込むことが重要ではないか」と問題提起をしたのだ。
しかも小池氏は「排除」発言後、記者に対する排除(選別)の姿勢を強めた。翌30日、大阪市内で開かれた東京、愛知、大阪の三知事共同会見では、指名役の司会者に「当てないで」というメモを渡し、質疑応答で手をあげ続けた私が指されないような工作をした。
排除発言から2週間後の10月13日、都政関連の定例会見後の囲み取材(国政関連)でも、私が質問を発したとたん、5分しかたっていないのに会見終了を宣言。立ち去ろうとする際に、都知事会見指名回数トップの「お気に入り」である日本テレビの女性記者に呼び止められると、いったん立ち止まって質問に答え始めた。気に食わない記者は終了宣言で排除、お気に入りの記者には終了後でも答えるというトランプ米大統領並みの差別的対応。政治家だけでなく、記者までも排除したと言えるのだ。
選挙戦中はさすがに取り繕うような言葉はなかったが、排除発言が失速の要因だと実感していたことは、私への対応からもはっきりとわかった。「わかりました」「受け止めます」‥‥この2つが小池氏の常套句だったが、それさえ口にせず、私から逃げていた。
選挙戦中の街頭演説で、小池氏は逆風を実感していただろう。前原氏とそろい踏みした大井町駅前、そして選挙戦最終日、そこには1年前の都知事選の熱気はなかったからだ。観衆の拍手や歓声は立憲民主党に向いていた。
小池氏が排除発言を白紙撤回する猶予は、立憲民主党が結成されるまでの3日間あった。その間にリベラル派を受け入れる寛容さを見せていれば、まったく違う結果が待っていただろう。
「排除されない」と議員の前で話した前原氏よりも小池氏のほうが「正直」だった。その反面、「私が排除を言う分には許される」と、小池氏は自分の人気を過信したとも言えるのだ。
衆院選投開票の翌日、小池氏は出張先のパリで「今回の総選挙で鉄の天井があることを知りました」と語った。責任転嫁とはこのことだ。希望の党の惨敗を招いたみずからの愚行を反省せず、日本の特殊事情であるかのように語るようでは、「リーダーとしての資質に欠ける」と批判されてもしかたがないだろう。
今後も私は小池氏を追い続けていくつもりだ。
横田 一(ジャーナリスト)