「消費税増税」や「憲法改正」を争点に繰り広げられた衆院選は、化けきれなかった「緑のタヌキ」などお構いなしに、自民党の大勝で幕を閉じた。これで国民の信任を得たとして、「安倍一強」がまんまと選挙公約を遂行したら、庶民の生活はどう変貌するのか。その疑問にお答えしよう。
【Q1 消費税10%で誰が悲鳴を上げるのか?】
「消費税増税」で社会保障費から「教育無償化」への使途変更が重要争点だった衆院選。自公圧勝で、19年10月から消費税率が10%に引き上げられる。モロに影響を受ける業界について、経済評論家の松田一雄氏はこう解説する。
「厳しい風が吹くのは小売業界です。すでに円安によるコスト増のうえ、デフレ下で安値価格競争にさらされ、増税で倒れるところが出てもおかしくありません。すでにスーパーやドラッグストアでも全国的にM&A(合併買収)が吹き荒れ、このほど三越伊勢丹HDは傘下のスーパーの売却に踏み切っています」
安倍晋三総理(63)はデフレ脱却を声高に叫ぶが、イオンの岡田元也社長(66)が「脱デフレは大いなるイリュージョン(幻想)だ」と公言するなど、アベノミクスへの恨み節が止まらない。松田氏が続けて言う。
「意外なところでは、医療業界がキツくなります。病院は医療機器などの設備を購入する際に消費税を負担しますが、患者は医療行為について非課税。そのため、消費増税が病院経営を直撃する。これまではそうした病院の負担に診療報酬の引き上げで対応してきましたが、来年度の診療報酬改定ではむしろ引き下げが検討されています。収入が減ったところに増税のダブルパンチで『倒産』する病院が出てもおかしくない」
病院が減って「医療難民」が続出することにもなりかねない。
【Q2 アベノミクスを再始動させるとどうなる?】
国民の信任を得たとして再始動するアベノミクスは、「円安」と「バラマキ」が二本柱。その円安政策を受けて、日本電産や村田製作所などの部品メーカーが「売上高1兆円」の大台を突破した。
バラマキ政策でもゼネコンや不動産業者に利益がもたらされた形で、17年度の第1四半期決算で、大手ゼネコン4社の利益が最高益に達するなど、建設業界は活況を呈している。
「選挙後、経団連が会員企業各社に献金を呼びかけるなど、『安倍詣で』に入っています。これから開かれる与党議員の政治資金パーティーでゼネコンからのパー券購入ラッシュも予想されます」(前出・松田氏)
だが、それはほんの一部分。安倍自民が「失業率が下がった」と胸を張ろうと、非正規雇用者が増えているのが現実社会だ。賃金も一向に上がる気配がない。
「安倍政権は働き方改革を推進していますが、その中で労働市場改革に手をつける可能性があります。政権ブレーンの中には、従業員を解雇しやすくするための雇用改革を提唱する人もいて、正社員の『大量クビ切り』が起きてもおかしくありません」(前出・松田氏)
さらには、こんな指摘も。
「いつ、ゼロ金利から上げるのか。金利を上げると、土地やマンションの価格が過去最高になっている不動産の投資に莫大な悪影響が及び、土地バブルが一斉にハジけて廃墟が増えます。今、銀行の融資先の大半は不動産。金利は上げるに上げられない。これが続くと、アベノミクスは必ず破綻します。そして企業業績は悪化し、夫の給料が激減した妻が家計補填のため、手っとり早く高給を求めて働きに出れば、熟女風俗嬢が急増することになる」(金融関係者)