芸能レポーターとして数多くの芸能人を取材してきた城下尊之氏が、書籍「生き残る芸能人のすごい処世術」(KKベストセラーズ)を上梓。頂点を極めたタレント・俳優たちが、いかなるテクニックをもって人心掌握、危機管理に臨んでいるのか、その一部を紹介していこう!
現在「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ)、「バイキング」(フジテレビ)などのワイドショー番組でも活躍中の城下尊之氏。自身の記者生活を通して、長きにわたって活躍している芸能人は、それぞれ独自の処世術とも言うべきものを身につけていることに着目。自著の中で、89名の芸能人のサバイバルテクニックを明らかにしている。
「芸能活動をするうえでまず大事なのは、相手の人心を掌握すること。それにはまず、よい第一印象を残すことが必須です」
当たり前の対応では相手の記憶には残らない。どうすればインパクトのある好印象を残せるのか。
城下氏がまずあげたのは、映画や大河ドラマなどで大活躍中の綾瀬はるか。すでに大女優の仲間入りを果たしたと言っていい彼女が取材時に見せた、ある突拍子もない行動に城下氏は驚いたという。
「CMの撮影で一日密着取材していた時です。ワンシーンを撮り終えていったん控え室に戻る綾瀬さんにカメラを向けながらついていくと、綾瀬さんが部屋に置かれたついたての向こうに入ったかと思ったら、やおら着替えを始めたんです。そりゃビックリしますよ、若い人気女優が、ついたて一枚隔てたところで、服を脱ぎ始めたんですから」
まさか女優が自分と同じ部屋で着替えるとは誰も思わないだろう。しかも、周りは全員男性なのだ。
「みんな一斉に外に飛び出したんです。そしたら『全然平気ですよ、気にしないで部屋にいてください』と綾瀬さんの明るい声が追いかけてきたんです。『ああ、彼女は我々に全幅の信頼を置いてくれているんだ』と、そこにいたみんなは彼女にメロメロですよ(笑)」
相手の心をしっかりつかんだこの所作は天然なのか、計算ずくなのか。どちらにしても、うなるしかない。
「大麻パンツ事件」など破天荒な行動が取り上げられることが多かった名優・勝新太郎もまた、見かけによらず神経がこまやかで人当たりのいい人物だった。
最後の主演・監督作となった「座頭市」の撮影時、なかなか取材に応じてもらえなかった勝を追いかけた城下氏のチームが、ようやく新幹線の車内でつかまえることに成功した。
「グリーン車にいる勝さんにインタビューを申し込むと、やおら席を立って、その車両の乗客たちに向かって『今からテレビのインタビューを受けるんです。20分ほど、ご迷惑をおかけしますが勘弁してください』と、大声で挨拶をし始めたんです」
これには、取材歴の長い城下氏もビックリ。
「本来なら、こういうお願いは我々がやらなきゃならないことです。それを大スターがやってくれたんですから、乗客から文句が出るはずがありません。本当に助かりました」
たとえ苦手な相手であっても、時には手を差し伸べる。度量の大きさを見せつけることで、相手や周りを自分のファンにしてしまう。これぞ、大物ならではの処世術かもしれない。