メジャー17年目の今季もイチローは存在感を発揮していた。代打安打で27本をマーク。メジャー記録の28本にあと1本届かなかったとはいえ、歴代2位の数字を記録した。代打起用という非常に難しいポジションを強いられながらも、44歳にして難なくハイレベルな仕事をやってのけてしまう能力には、まだまだ多くのメジャー球団から熱い視線を投げかけられている。去就先に困り果てている松坂とは様相が違うようなのだ。
実際、始まったばかりの「MLBストーブリーグ」でイチローは早々に名前をあげられ、全米でも関心の高さを証明している。中でも注目は、古巣・マリナーズが「レジェンド」をカムバックさせるべく再獲得に動くとメジャー関係者の間でささやかれているのだ。地元有力紙「シアトル・タイムズ」でも10月末に〈イチローはシアトルに帰ってくるべきだ〉との特集記事が組まれるなど、現地メディアでもレジェンドへの熱烈なラブコールは鳴りやんでいない。
「より具体的な情報としては、つい先日、イチローの代理人を務めるジョン・ボッグス氏とアスレチックスの幹部が極秘接触したといいます。それ以外にもフィリーズとジャイアンツのナ・リーグ古豪2球団もイチローの獲得に強い関心を寄せていると、複数の米メディアが報じている」(メジャー担当記者)
まさに引く手あまたで、来季もメジャーで18年目のシーズンを迎えそうだ。とはいえ「50歳まで現役続行」を目標にしているイチローにとって、その先、将来的な日本球界復帰という流れはありえないのだろうか──。イチローに近い関係者に聞くと「まずありえないでしょう」と笑い飛ばし、次のように続けた。
「イチローが引退すれば、まず間違いなくメジャーリーグで日本人初の殿堂入り選手となる。自身の商品価値がどのようなレベルにあるか、ほかならぬイチロー本人がわかっている。だから晩節を汚したくないんです。メジャーで通用しなくなったからといって、日本球界に逃げ道を作る“安売り”は自分の美学に反すると考えています。それを選んでしまうと、自分が貫いてきた生き方にも傷をつけてしまうと思い込んでいる。メジャーでプレーヤー人生を全うする。それがイチローの考え方であり、生き方なのです」
どこまでもストイックなイチローの姿勢は、同じく窮地に立たされもがいている松坂とは対照的に見える。
日米の大舞台でしのぎを削ったスーパースター2人は、はたして来季、どのチームのユニホームを着ているのだろうか。注目が集まっている。