交渉には重要な代理人の選定作業も二転三転していた。そもそも代理人として大谷に熱心な働きかけをしてきたのは、松坂の代理人も務めたスコット・ボラス氏(65)だった。一昨年9月、ボラス氏本人が札幌ドームに乗り込み、大谷とは会えなかったものの、正面玄関からフロントへ挨拶にやって来たほどだ。その流れでボラス氏は日本事務所の関係者とともに佐々木監督にも急接近し、口説き落とすことに成功したと言われていた。
「もしボラス氏が代理人になっていたら、することは決まっていた。大谷はもちろん、25歳以下の選手は契約金、年俸を大幅に抑えられるという現ポスティング制度を壊すことです。ボラス氏は才能ある選手に門を開かないのはおかしいと批判してきましたから。その考え自体、大谷サイドにとっても悪い話ではないはずです。ところが『吸血鬼』と呼ばれ、交渉する球団どころか、クライアントの選手まで吸い尽くすボラス氏の悪評もあって、情報収集した父親や球団でもメジャーに精通している木田優夫GM補佐(49)、栗山英樹監督(56)らが大谷のイメージダウンを気にして佐々木監督を説得し、排除したといいます」(球界関係者)
当初は本命だったボラス氏の話が潰れ、その隙間を縫うように大谷の代理人となったのが、ネズ・バレロ氏(54)だ。日本選手ではマーリンズの田澤純一とメッツからFAとなった青木宣親を担当している敏腕代理人。そして、ここでもまた、大谷があずかり知らぬところで暗躍する人物がいたと見られている。
「現野球解説者の石井一久氏(44)ですよ。実はバレロ氏が所属する事務所『CAA』は石井氏が所属する吉本興業と業務提携をしています。石井氏が西武OBとして、やはりメジャー入りを目指す、菊池雄星(26)や牧田和久(33)と接触。彼らをCAAとつないで契約させたと言われます。西武の球団内からは、次々と選手のメジャー移籍準備を進める石井氏に対する恨み節も出ている。大谷に関しては、高校の先輩であり、信頼できる雄星から佐々木監督に代理人の紹介があり、話が通ったと類推はできます」(スポーツ紙デスク)
ところが、そうした構図は若干違うという。メジャー事情に精通する在米のジャーナリストが明かす。
「ここにきて、大谷に対する佐々木監督の求心力が低下しつつあると言われます。確かにメジャーリーグの複数球団のスカウト、幹部クラスの間では、最近まで『大谷の陰のキーパーソンは佐々木監督』というのが定説でした。ところが、最後はやはり血を分けた親子なのか、今は父親の影響力が大きくなっている。渋る佐々木監督を説得して木田GMや栗山監督とともに『バレロ氏でいいです』と押し切ったのも父親だったそうです。石井氏も佐々木監督ではなく父親に近づき、グイグイと押し切って攻略したと言われている。最終的には大谷本人がバレロ氏と会って決断したことにはなっていますけどね」
そして、石井氏の存在をクローズアップさせるように、大谷の移籍先候補としてパドレスが急浮上しているという。
「パドレスで球団アドバイザーを務めているのが、『サミー』こと斎藤隆氏(47)で、吉本興業所属。サミーは石井氏とも当然ながら昵懇の間柄で、交渉をスムーズに進めるお膳立てがなされていると言われます」(前出・在米ジャーナリスト)
徐々に点と線が結ばれつつある大谷のメジャー挑戦。だが、そこにどれだけ本人の意思が反映されているかは、はなはだ疑問である。
「プロ入り後、大谷は外出時に事前の報告義務があるほど管理されてきた。初の渡米は心細いでしょうが、なんと日本ハムから気心の知れた通訳と、体を知り尽くしているトレーナーが付いていくようです。大谷のメジャー入りで育成能力をあらためて示すこととなる日本ハムは、移籍金だけでなく、今後の良好な関係も約束されている」(前出・球界関係者)
周囲の雑音に惑わされず、二刀流がメジャーを席巻する姿を見たいものだ。