プロ野球の「ストーブリーグ銭闘」も今や昔。かつては、シーズン以上に盛り上がる契約更改もあった。球団提示額に不満を露わにする選手、交渉がまとまらずに「越年」する選手…ところが近頃では、マスコミを使った「口撃」を目にする機会もほとんどなくなった。なぜなのか?
「ひとつは、球団が選手との『裏交渉』をしっかりやるようになったというのがあると思います。やはり、選手がマスコミの前であからさまな球団への苦言を呈することでのイメージダウンを避けたいという思惑があるのでしょう。2013年のオフに落合博満がGMに就任し、血も涙もない10億円のコストカットをした時も、表立って選手側のコメントが誌面をにぎわせるということがなかったですし」(スポーツライター)
その中日は、今でも語り草になっている福留孝介の「誠意とは言葉ではなく金額」(07年)を筆頭に、井端弘和の「ショックで震えることってあるんですね。金額を見た瞬間に足がガクガクになりました」。さらに後日「日が経って、さらに腹が立ってきた」(05年)という至言も。荒木雅博は「ハワイで夢を見ました。球団から『低姿勢でいてくれたら、金額を上げてやる』って」(07年)という発言も。藤井淳志の保留でのイメージダウンについて「アイドルじゃないんで。どうでもいい」(09年)や、川上憲伸の「こんなに活躍できる年は一生に一度あるかないかだと思う。だから『来年活躍したら上げてやる』という言葉には乗らない」(04年)という「銭闘体勢」な言葉もあった。
話を戻そう。契約内容の複雑化によって「大台突破」「3億円」などとシンプルに出しにくくなったという見方もある。
「代理人交渉制度が定着したことも大きいでしょうね。かつては、いわゆるビジネスマンが、子供の頃から野球しかしてこなかった人を相手に高圧的に契約を結ぶ図式がありましたから。また、出来高でのインセンティブ契約を結んでいる選手が多く、発表されている金額と実際に受け取っている金額が全然違うというケースも増えてきています」(前出・スポーツライター)
その昔は、契約更改時の記者会見で「いち・ろく・ご」(1億6500万円)とコメントを発した中日時代の落合博満や、「5億円突破!!」と書かれたバズーカ型クラッカーを放った巨人時代の松井秀喜など、誰の目にも歴然な「明朗会計」だったものだが、これも時代の流れだろうか。