18年、安倍首相の最大目標は、9月の自民党総裁選で3選を果たすこと。それは首相の側近議員も認めるところだ。この目標を達成すれば、あと3年間を首相として過ごせる。長期政権を実現して、憲法改正を推し進めたいと考えているからだ。
安倍首相本人も12月19日の講演で、抑え気味だった憲法改正について「2020年に日本が大きく生まれ変わる年としたい」とあらためて明言している。
このまま安倍首相は突き進むのか。前回の総裁選は無投票再選。安倍一強に党内は沈黙したのだが‥‥。
「この国に何か残さなきゃならない。残さなくていいというなら政治家なんか辞めたほうがいい」
私にそう語って、沈黙を破るのは石破茂・元地方創生相。ポスト安倍の有力候補は18年の総裁選に出馬するのか。サシで聞いた。
「そもそも(総裁を)党員が選択できないというのはおかしい。(前回は無投票で)権利を行使できなかったわけだから、来年は党員の権利を行使してもらえるようにしないと政党の名に値しない。その中で、私であれ、誰であれ、20人以上の推薦人を集められる人は、自分の意見をきちんと出して、党員に選んでもらうことが必要だと思う」
慎重な口ぶりだが、再度、出馬の意志を問うと、
「あとは、自分にとってのタイミングが、いつなのかということだけ」
石破氏はそう答えた。まだ明言する時期ではないのだろう。だが、出馬の意欲を感じさせた。というのも、安倍政権の政治姿勢に質問が及ぶと、厳しい答えが返ってきたからだ。
「自民党は国民政党。右から左までいろんな考えも意見もあって当然。それを(安倍首相のキャッチフレーズは)『この道しかない』って、おかしいでしょう」
「(森友学園は)国会の求めに応じて報告が出た。感情論ではなく、きちんと法律と数字と事実に基づいて、どうしてこんなことが起こったかを解明するのは国会の責任だ。(財務省の担当局長だった佐川宣寿国税庁長官は)国会でなくてもいい。記者会見でもいいから納税者にきちんとした説明をするのが国税トップの務め」
当然だが、安倍首相の政策にも手厳しい。
「(アベノミクスの)大胆な金融緩和や機動的な財政出動なんて、いつまでもどこまでも続くはずはない。このまま潰れるのか、次の世代に何か残せるのか、その瀬戸際に来ている。地方には経済、サービス業など伸びしろと潜在力がある。いつの時代も、国を変えるのは地方。地方のポテンシャルを最大限に引き出すのが次代の政治の使命です」
石破氏は総選挙後、多い時は週4日も地方を回っている。講演や勉強会である。地方にこだわるのは、まさに「地方」が構想の軸だからだ。総裁選に向けた政権構想を「18年6月頃にはまとめたい」との意向を示す。
現在、永田町で石破派は19人。だが、石破氏の側近議員はこう語る。
「地方からの講演要請はひっきりなしに来る。それぞれの支部などで石破待望論が強まれば、その地域の国会議員だって、安倍さんというわけにはいかなくなる」
総選挙で大勝した安倍政権の内閣支持率は回復したが、一方で総裁選3選について「安倍首相以外」という世論が半数を超えている。それは「モリカケ問題」の対応への不信感が大きな原因だ。安倍政権への逆風が吹く素地は残っている。
ライバルがいてこそ、安倍首相も成長する。そして弛緩した政治も引き締まる。石破氏は「政治家としての責任」を、出馬という形で果たすことだろう。
ジャーナリスト・鈴木哲夫(すずき・てつお):58年、福岡県生まれ。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部、日本BS放送報道局長などを経てフリーに。新著「戦争を知っている最後の政治家中曽根康弘の言葉」(ブックマン社)が絶賛発売中。