そればかりではない。フロントとの確執の火種は、監督のみならず、別の首脳陣との間でもくすぶっていた。1月9日、新人合同自主トレで取材に応じた斎藤雅樹投手コーチ(52)は、即戦力の期待がかかっていたドラ1ルーキー・鍬原拓也(21)が上半身のコンディション不良で「開幕は間に合わない」と言及している。
「斎藤コーチは、一昨年の夏に肩と肘を故障し、まだ回復していない鍬原を1位指名した編成担当に対し、『どこ見て取ってんだ』とブチ切れていた。スポーツ紙などでは『オールスター前後に投げてくれれば』と前向きな発言を取り上げていましたが、実際の現場では『間に合うわけないでしょ!』『マイコラス(29)は残るって聞いてたんだけどね!!』とグチ交じりに吐き捨てていた」(巨人番記者)
そのマイコラスは昨年14勝。先発ローテーションに空いた穴をいかにして埋めるのかが今季V奪還を果たすための課題だが、元日放送のラジオ特番で由伸監督は耳を疑う「皮算用」を披露したのだ。
「山口俊(30)、FA移籍の野上亮磨(30)、若手の中川皓太(23)の3人で20勝してほしい」
今季加入の新戦力と、昨季に力を出し切れなかった選手を上積みしてハジき出した計算だが、優勝するためにはマイコラス分を埋めたうえで、さらに大幅な勝ち星が必要なはずなのに、
「ものすごい低いハードルに、複数の球団関係者も、『何だよ、これ? ハナッからやる気がねぇんじゃねーか』と失笑していた。さらには昨年7月に飲酒暴行事件を起こし、残りシーズンを出場停止になった山口も放送内容を聴いて、『3人で20勝かよ』とムッとしていました。去年1勝1敗に終わった投手の言うことではないのですが‥‥」
西武からFA移籍の野上にも過度の期待は禁物だと、巨人OBは言う。
「西武時代からずっと、勝ちと負けが同数のタイプの投手です。去年は11勝10敗ですが、パ・リーグでトップの得点力を誇った西武打線に助けられた試合が少なくない。貧打の巨人では黒星先行になりかねませんよ。有望左腕と見られる中川も実績不足ですし、目標設定は低いですが、それですら由伸の思惑どおりにはいかないでしょう」
ならば新外国人投手の大暴れに望みをかけたいが、それも容易ではなさそうだ。16日に入団が発表されたヤングマン(28)について、前出・巨人OBが続ける。
「15年にブルワーズでメジャー9勝をあげた右腕ですが、四球が多く、ランナーを背負うと焦る悪癖がある。しかも、いわゆる『ゴロを打たせてアウトを取る』タイプの投手で、お世辞にもうまいとは言えない巨人の内野守備との相性は最悪でしょうね」
どうやら特大の「先発ローテの穴」を抱えたまま、キャンプに突入することになりそうなのだ。
そして新戦力と言えば、最も注目されているのが中日から移籍してきたゲレーロ(31)だろう。昨季は2割7分9厘、35本で本塁打王も獲得しており、4番の期待もかかる。ところがこの目玉補強も、チーム内の「不協和音」を大きくするばかりだという。
「ゲレーロは、ドジャース時代に同僚選手と殴り合いの大ゲンカをするなど、『チームの輪を乱す』といわくつきの選手。中日では中南米選手の操縦に慣れている森繁和監督(63)がニラミを利かせ抑えていましたが、個人主義でフォア・ザ・チームの精神に欠けるため、同じ助っ人でも真面目で人柄もいいマギー(35)との衝突は避けられないでしょう。同様に素行不良外国人を嫌い、昨年シーズン中にクルーズ(33)を楽天に放出した由伸監督とも、性格面でぶつかる可能性があります」(スポーツ紙デスク)
前出・巨人OBは、肝心の打棒にも疑問を呈している。
「広いナゴヤドームから東京ドームに来たら、本塁打数はそりゃ増えるかもしれません。ただ、去年も得点圏打率は2割5分程度で、ここぞという場面で打っていた記憶はあまりない。それに、入団交渉でも、獲得に動いていなかったソフトバンクの名前をちらつかせて、2年推定8億円という大型契約を勝ち取った。中日が拒否した複数年契約を巨人が採用してしまったことで、1年目からバリバリ働くかどうかも怪しい」
負け試合に打ち上げる「ソロ空砲」ばかり、とならなければいいが‥‥。