〈小室哲哉引退!〉
生放送レギュラー番組「新・情報7daysニュースキャスター」の中で、その日飛び込んできたトップニュースに、殿は番組冒頭で、「ファンがいるのに引退するのはどうかね」と、まずはエクスキューズを投げかけると、
「芸人っていうのは、客がいればやる。客がいなけりゃ引退するしかない。俺がライブをやるっていったって、お客が0だったらしょうがないじゃん。お客がいるうちはやりますよ」
と、持論を述べたのです。
殿の中で、「芸人の引退」といったテーマは、何度か語られてきた話題であり、幾度となく「たけし引退論」を聞いたことがあります。
ちなみに殿が言う「芸人」とは、何もコメディアンや漫才師だけのことではなく、歌手、役者、タレント、バンドマン、落語家さんと、「客前で何かを披露する全ての人」が対象です。
とにかく殿には、「芸人の引退」について一貫した意見がはっきりとあります。
「俺たちみたいな商売は、あってもなくてもいい商売なんだから、見たいという人がいればやるけど、誰も見たくなくなったら、その時点でもう終わりなんだから。引退うんぬんじゃなくて、ほっといたって引退させられるんだから」
「今までファンにさんざん頼ってやってきといて、急に事情ができたから辞めますってのは、ファンに対しても、やってきたことに対しても失礼だよね。だって、ツービートが世に出たことで、どれだけ東京の漫才師が犠牲になったと思ってるんだよ。俺たちが売れたことで、辞めた漫才師だっているんだから」
これらの殿の発言からは、人気商売の“業の深さ”と、それに伴う犠牲、そして、それを背負ってやっていく覚悟がはっきりと伝わってきます。
芸能という人気商売において、誰よりも“一番高い位置で、抜きん出て長く”体を張ってやってきた殿だからこその発言である、と。
ちなみに、「スポーツ選手が体力の衰えや限界を感じ取り、けじめとして引退を発表するのは至極当然のこと」といった発言を、殿から聞いたこともあります。
で、冒頭の〈小室引退〉について、放送終了後、殿と楽屋にて、改めて“その話題”で、あーでもないこうでもないとディスカッションをしている時、何だかふざけたくなったわたくしが、「でも、さんざん『勝手に辞めるのはおかしい』なんて言っていた殿が、明日あたり、いきなり引退会見を開いたりするんですよね」と“ネタ”を振ると、殿は瞬時に、
「うん。『最近はすっかり勃ちませんので、本日をもって引退いたします』って、バカなこと言わせんな!」
と、珍しく“ノリツッコミ”を楽しそうに披露する殿なのでした。
しかし、ほとんど宣伝もせず開催した、つい先日の単独ライブでも、圧倒的多数の応募があった殿に、「客が0の日」など、本当に来るのでしょうか?
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!