元横綱・日馬富士の暴行事件に始まり、スキャンダルが続く相撲界。ケガ人が相次いだ初場所は「野戦病院」と化し、相撲協会では「内紛」の噂が絶えない。もう黙っていられない──。かつて貴乃花親方と同部屋でシノギを削った元関脇・貴闘力が緊急激白!
「復活はないと思う。今の状況を見ると無理かもしれない」
貴闘力がまずやり玉にあげるのは、先の初場所を6日目から休場し、これで5場所連続休場となった日本人横綱・稀勢の里(31)だ。だが、厳しい言葉は期待と愛情の裏返しでもある。
「ずっと応援しているんですよ。私はずっと前から言い続けていました。稀勢の里の相撲を見ると、持っているものを全部出そうという意気込みが伝わってくる。そうやって完成させていった相撲に大きな感動をもらいました。だから応援したくなる。その気持ちに今も変わりはありません。稀勢の里が本当に好きだから、多少はキツいことも言いたくなるんです」
初場所5日目までの成績は1勝4敗。平幕力士に3つの金星を配給することとなった。
「大胸筋と上腕二頭筋を痛めてまだ十分に使えていないわけですから、本来ならば取り口を修整しなければいけない。場所前の1、2カ月で何か対策を講じていたかというと、稀勢の里には全然、その形跡が見られない。下から阿武咲(21)、貴景勝(21)といった若手がグングン伸びてきているのに、その中で稀勢の里が勝っていくイメージがどうしても湧かないんですよ」
今年1月2日の初稽古では、同部屋の大関・高安(27)と三番稽古を行い、25勝6敗と復調ぶりをアピールしていたが‥‥。
「初場所で白星を重ねた高安にとってはいい稽古になったでしょう。しかし稀勢の里にとって、ただ胸を出して『ハイ、よっこらしょ』と受け止めるような稽古は意味がない。胸を出す相撲というのは楽だけど、何番取っても結果には結びつかないと思いますよ」
不調の一つの要因を分析したうえで、こう復活へのエールを送るのだ。
「必要なことは立ち合いから低く当たって差しに徹し、そこから一気に出ることではないでしょうか。そのためには、漫然と四股を踏んでいてもしかたない。腰を下ろした状態で、左右に体を動かし、立ち腰にならないようにする。膝の曲げ方をくふうしたり、もっと足首を柔らかく使うのもいいと思います。そういう試行錯誤や努力を怠っていては、復活優勝は難しいでしょうね。
土俵の上でもう一花咲かせるには、それこそ死ぬ思いで、もう一回苦しまなきゃいけないということですよ。“ガチンコ相撲”にこだわって、横綱になって、2回も優勝しているので、悔いはないかもしれませんが‥‥。
こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、私が教えたいくらいですよ。現役時代、休場は一度もありませんでしたから。相撲協会の幹部や横綱審議委員会も、ケガを治して完全復活するまでに、2場所でも3場所でも休んでいいと温情をかけてくれているんだから、そのチャンスを生かさない手はない。このまま引退なんてことになったら、横綱の名が泣きますよ」
稀勢の里と同じ立場に立たされていたのが横綱の鶴竜(32)だ。昨年は春場所こそ10勝5敗と勝ち越したものの、その他の場所は2場所の全休を含めて全て休場していた。
ところが今年の初場所では初日から10連勝を飾り、久しぶりに「強い横綱像」をファンに印象づけたが、あとは4連敗。貴闘力の見立てはこうだ。
「初日の相撲を見た時に、これは活躍するなと思いました。体の張りが以前とはまったく違いましたから。12日目で単独トップに立った栃ノ心(30)にも同じ印象を抱きましたよ。体に張りがあって艶もある。期待していたら案の定、優勝争いに絡んできた。
終盤で連敗してしまったけど、鶴竜については何の問題もない。完全復活ですよ。確かに批判はいろいろあったかもしれないけど、人知れず努力を続けていたんだもの。
人から聞いた話では、鶴竜は昨年の大みそかも、師匠(井筒親方=元関脇・逆鉾)の弟(錣山親方=元関脇・寺尾)の錣山部屋に来て、しっかりと汗をかいていたそうです。ムダに休んでいなかったということです。鶴竜は努力家だし、頭もいい。これからの場所でも、大いに盛り上げてくれると思いますよ」
◆貴闘力(50):二子山部屋出身の元大相撲力士。現役時代の得意技は突き、押し。焼き肉店や居酒屋をはじめ11店舗の飲食店を経営し、グルメ・スイーツ研究家としても活動している。