日本の競馬界は昨今、外国人騎手に席捲されている。だがその活躍の陰では、騎手や調教師らを巻き込んだ新たな「遺恨」が勃発。騎乗トラブルに傍若無人な暴言──火種をまき散らす一触即発の現場を全て書く。
今年の正月競馬で騎乗停止処分を受け、出遅れたC・ルメール(38)は東西リーディング6位にとどまるも、M・デムーロ(39)は2日間の騎乗停止がありながら15勝でトップに躍り出た(いずれも2月4日現在)。
2月18日の今年最初のGI「フェブラリーS」では、連覇中のデムーロこそお手馬不在(2月6日時点)だが、年間199勝で昨年の東西リーディングに輝いたルメールは、昨年の2着馬ベストウォーリアで挑む。スポーツ紙デスクが言う。
「昨年の勝ち馬で最優秀ダート馬に輝いたゴールドドリームは、世界的名手のR・ムーア(34)とのコンビで出走。昨年12月のGI、チャレンジCは8番人気まで落としながらの復活勝利でした。『ムーアはやっぱりすごいわ』と陣営も久しぶりの美酒に酔っていましたし、このあとのドバイ遠征を見据えての継続騎乗です。今年最初のGIもルメールとムーアに注目が集まり、また引き続き、外国人騎手が暴れそうですねぇ‥‥」
そんな外国人騎手に対し、日本人騎手は「包囲網」の構成で対抗を試みるが、そこで「蛯名正義(48)VSデムーロ」という遺恨の構図が生まれたのだった。
「昨年の有馬記念はキタサンブラックと武豊(48)のコンビでの楽勝劇でしたが、その裏には日本人騎手による外国人包囲網が見てとれた。逃げるキタサンのすぐ後ろの内、中、外をガッチリと日本勢が占めて、4角まで道中の隊列がほとんど変わらないスローペース。あんな流れの有馬記念なんて見たことがありませんでした。その結果、直線の坂下からデムーロとルメールは制裁覚悟とも取れるラフプレーで強引に抜け出しを図った。両者から不利を受けた被害馬騎乗の蛯名が追うのを止めたぐらいでした」(前出・スポーツ紙デスク)
直線でデムーロがボウマンにぶつけ、内に寄ったボウマンが蛯名に激突する「玉突き事故」。蛯名は急ブレーキをかけ、馬が立ち上がるほどだった。16着に散った蛯名はレース後コメントを求める取材陣に対し、
「完璧に運べたが、最後の最後で‥‥。馬にケガがないことを祈ります」
と淡々と答えていたというが、専門紙トラックマンは、こうも明かすのだ。
「てっきりラフプレーについて蛯名節でまくしたてるかと思っていましたが、とても冷静でビックリしたぐらいです。でも翌日になると一変していました(笑)。夜、眠れないぐらい悔しくて頭にきたんじゃないですか」
蛯名と親しい記者から報告を受けたデスクが話す。
「蛯名番の記者はもとより、ベテラン若手問わず、騎手や調教師から『ひどかったな』『何でもありだな』と声をかけられると、『(デムーロの騎乗馬が)内にもたれてたけど、ミルコほどの騎手ならまっすぐ走らせようと思えばできただろう』と、まずはホメ殺し。そして『やり得だな。(内にもたれているのを)知ってて追うのを止めないで、斜めに走らせてたし』と、現行の降着制度を巧みに利用した汚いプレーだと批判したそうです。今年は蛯名だけでなく、多くの日本人騎手がデムーロに身勝手な走りをさせないと思いますよ」
この一件で、デムーロは2日間の騎乗停止処分を受けた。