〈たけし、式守伊之助姿での豆まき失敗 関係者から待った〉
2月初旬、こんな記事がネットニュースのトップにあがりました。なんでも前日、殿の地元、足立区の某所にて、節分で「豆まき」にお呼ばれした殿が、持参した“完璧な行司のカッコ”に着替えて出ようとしたところ、イベント関係者から、「やめてください」と、はっきりと制止されたそうです。ちなみに、なぜに殿は式守伊之助をチョイスしたのかと申しますと、半月前の自身の単独ライブにて、去年、“なにかと世間をお騒がせした行司”のカッコで登場した際、ドッとウケた経験から、“お相撲さんも多数参加する豆まきで、また行司のカッコで登場したら、さらにウケるのでは?”と、“式守チョイス”をしたのです。
で、この日の夜、某局の楽屋にて殿にお会いすると、殿は、「おい、式守ダメだったわ‥‥」と、“心底残念”といった報告をまずは入れると、続けて、「ちょっとシャレがきつすぎたかな」と、めずらしく反省の弁を口にしたのです。今さらわたくしが申すまでもございませんが、殿はとにかく、何かに扮装をして登場をするのが、大好きな方です。
かつて、日本アカデミー賞の授賞式に、鞍馬天狗のカッコで登場したり、カンヌ国際映画祭の60周年イベントに招かれた際には、浅草あたりで売っている、安っぽいおもちゃのチョンマゲのカツラをかぶって登場したりと、とにかく、公の場にふざけたカッコで登場する“扮装ギャグ”を、繰り返しやっています。
さらにちなみに、殿がよくやる、「どうも、渡辺謙です」「こんにちは、許永中です」等々、その時々の気分によって、自己紹介でいきなり、他人の名前をあげてボケるやり方も、扮装ギャグ同様、かなり大好物です。
そういえば、ある意味、殿が発明した名前ボケは、一時期、古舘伊知郎さんもよくやられていました。
で、“式守ギャグ”を果たせなかった殿はその後も、「しかし、今日は惜しかったな」「寸前のところでバレちまったな」等々、制止されたことをいつまでも悔やんでいました。ただ、悔やむだけで終わらないのが殿です。
「こうなったらあれだな。どうにかして、相撲界に潜りこんで、年寄株を取得しないとダメだな」
と、とんでもないことを言い出しかたと思えば、
「でもやっぱり、年寄株は無理か」
と、すぐにあきらめては一人涼しい顔をしていました。とにかく、この日は豆まきの話題で盛り上がり、何だかんだ言っても、殿は終始上機嫌で、仕事を終え、帰る間際にも、
「おい、まだどっか、式守伊之助のカッコできるとこねーか?」
と、周囲に問いかけると、
「でも、もう旬じゃねーか!」
と一人勝手にツッコんでは、なんとも楽しそうに帰っていったのでした。
改めて、ビートたけしは、ボケることに、誰よりも貪欲です。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!