藤井は2月1日にC級2組からC級1組への昇級を決め、規定により五段に昇段。そのわずか16日後、先に触れた「朝日杯制覇」が「五段昇段後の全棋士参加棋戦優勝」という条件を満たし、史上最年少で六段昇格を果たした。
師匠の杉本七段にとっても、「異次元」とも言えるまな弟子の強さとスピード出世は、想像の範疇をはるかに凌駕していたという。
「プロ1年目に関しては、目をつぶっても7割は勝てるのではないか、と考えていました。棋戦で勝ち進んでトップクラスの棋士と対戦して負けるくらいで、同じ立場の四段や五段相手にはそうそう負けない潜在能力があると思っていましたから。でも、そんな次元ではありませんでしたね。今回も名人と竜王を倒しての堂々たる優勝。29連勝もそうですが、予想できないことばかりです。こうなればこの先、藤井が何を起こしても、驚くことはないでしょうね」
4月に進学を控えた藤井にはまず、史上初の「高校生タイトルホルダー」の期待がかかってくる。
「これまでの最年少タイトル記録は屋敷伸之九段(46)の18歳6カ月ですが、獲得したのは高校を卒業後のこと。藤井が大幅に更新する可能性は決して低くない」(将棋ウオッチャー)
藤井が予選を勝ち残っているのは、竜王、王座、棋王、王将の4つ(2月24日現在)。松本氏によれば、
「目下のところ、勝ち残れば最速でタイトル挑戦できるのが、今年9月の王座戦になります。その次は10月から始まる竜王戦です。棋王戦、王将戦は年が明けてからになるので、今年はこの2つ。規定では王座獲得か、竜王戦連続昇級で七段に。さらに竜王位を獲得すれば八段に昇段するので、今年中に八段になれる可能性があります」
さらには、“高校生賞金ランカー”の可能性まで見えてきたという。
「私が推定するに、藤井さんの昨年の獲得賞金は1000万円に届かないくらい。日本将棋連盟は毎年、賞金ランキングの上位10名を発表していますが、10位がだいたい2000万円弱なので、朝日杯で750万円の賞金を得た藤井さんならば、今年のランキングに食い込めるかもしれません」(前出・松本氏)
昨年の藤井フィーバー報道で目にした読者諸兄も多かろうが、最高峰タイトルの竜王戦であれば、予選から高額な対局料が発生し、優勝賞金は4320万円にも上る。
「竜王戦は、開催時期の関係からランキングに賞金が反映されるのが翌年からになります。そしてランキングで1位を取るのは、ほとんどの場合、前年の竜王戦で勝利した棋士。ですので、今年は無理でも、来年の“賞金王”獲得は、決して夢物語ではないと思います」(将棋連盟関係者)
タイトル獲得どころか、史上初の「高校生賞金王」まで見えてきたところで、「藤井バブル」がもたらす経済効果にも触れておこう。
日本将棋連盟は、朝日杯の羽生戦の「記念将棋盤」と駒のセットを、藤井・羽生両者の直筆サイン入りで販売。150万円という高額商品にもかかわらず、広報担当者によれば、
「インターネットの公式ショップで発売後即日完売でした。今回の優勝・昇段を受けて、新しい藤井グッズの発売も検討中です」
将棋界の外でも「藤井効果」を期待する声は大きい。広告代理店関係者が語る。
「29連勝の段階でもCMのオファーが殺到していたようですが、連盟やご家族、それに本人も『今は将棋に集中する時期だから』という考えで、軒並み断られていました。藤井さんの商品価値は当時よりもさらに上がっているので、仮に高校生になってCM解禁ということになれば、ギャラは最低でも1本2000万円は下らないはずです」
記念すべき初CMが今から楽しみだ。