かつての大作映画には、女優たちの艶かしいシーンが差し込まれていたことは、誰もが淡い思い出として記憶しているはずだ。女子供も観るもの? そんなことは関係ねえ、とばかりに、男気あふれる作品を、カラミのシーンの評論家でライターの松井修氏が生々しく再現して見せる。
アクションあり、特撮あり、ロマンスありでオールキャスト、そして配給収入は23億円を突破。公開と同時に発売されたVHSは7億円を売り上げたという、名実ともに大作にふさわしいのが「里見八犬伝」(83年、角川春樹事務所)でした。
薬師丸ひろ子の真田広之とのラブシーンは、淡いながら2分もの間、騎乗位など体位を変えながらファックする。さらに驚愕したのが夏木マリのヌードシーンです。血の池に全裸入浴し、立ち上がって血をすくって飲み‥‥。
子供も観るような娯楽大作にもかかわらず、こうした場面を入れるのは、さすが濡れ場名人でもある深作欣二監督と感心しました。
前評判では「制作費10億をかけて原寸大の江戸城大奥を再現した」と話題になった「女帝 春日局」(90年、東映)では、当時40代後半の十朱幸代が濡れた襦袢から乳房を透けさせ、鳥越マリは上半身ヌードで騎乗位をやり、さらに豪快に全裸疾走。吉川十和子も、はだけた着物から片乳房がこぼれ落ちます。
実は肝心の本編が空回り気味で盛り上がらなかっただけに、こうしたお色気シーンが救世主だったと言っても過言ではないほど、女優陣の奮闘が光る大作です。
また、松坂慶子の体当たり演技ばかりに視線が行きがちな「青春の門」(81年、東映)ですが、推したいのは杉田かおる。子役スターだった彼女が、大人になった初ヌードを披露し、話題となりました。
二部作後編となる「青春の門 自立篇」(82年、同)では、みずからパンティ一枚となり、佐藤浩市相手のウブなファックを見せています。そのパンティの、いかにも“昔っぽさ”と、決してよくないプロポーションの実在感にそそられます。その点は、東宝版に出演した大竹しのぶにも同じことが言えますね。
戦前から11度も映画化された、オールスター文芸映画のド定番といえば、「人生劇場」(83年、東映)。松坂慶子や森下愛子など、濡れ場慣れした女優が出演する中で、新鮮な魅力を放っていたのが、同作で初ヌードに挑戦した中井貴恵。
スレンダーながらキレイに膨らんだお椀形のバストを、松方弘樹との対面座位で披露。さらに風間杜夫にも、しっかりと胸を愛撫されたあと、正常位で静かにアエいでいます。
かつて、大作に濡れ場があふれていた理由の一つに、「プレッシャーがかかった製作サイドが、とにかく娯楽要素を盛りだくさんに入れたくなるから」といったことがあげられると思います。
さらに当時は、「18禁映画」と「一般映画」の区分けしかなく、ちょっとした濡れ場やヌードシーンが入っているレベルでは、一般映画として公開できていました。だから、特に必要のないシーンで男性向けサービスとして、短くインサートされることが多かったのではないでしょうか。
近年は規制も細かく、増加した女性客への配慮もあってか、大作の男性向けサービスエロスは、悲しいかな死滅している現状ですね。