「報道特集」(TBS系)は12月16日の放送で、安倍晋三元首相が会長を務めた「清和政策研究会」(安倍派)の政治資金パーティー裏金問題に関し、地元山口県下関市で安倍派のパーティー券を長年にわたって購入していたという「安倍氏の元支援者」なる人物を取材した。ところがこの取材に、疑問の声が出ている。「元支援者」という人物は、
「パーティー券は数万円ですが、総額でいったらそこそこになります。つながりを持つためには断れない。安倍さんが生きていた頃ですからね。絶対的ですしね」
まずはパーティー券を購入した理由を、そう語った。その上で、政治資金収支報告書に超過分が記載されず、5年間で数億円が裏金化されていた疑いがあることについて、
「長い間、これだけの金額ですからね。ショックですよね。せっかく応援して頑張ってくださいよと資金を拠出したのに、何に使われたのかわからない。もどかしい。もし安倍さんが生きておられたら、いまだに蓋をしたままだと思いますよ。今、あの世では安倍さんがいちばん泣かれているんじゃないかと思います」
そう言うと、安倍派の対応を強烈に批判したのだった。
番組ではこの人物の顔を見せず、ボイスチェンジャーで声を変えて出演させ、いかにも「真相」を語っているようだが…。
安倍事務所が男性にパーティー券を購入してもらい、派閥からキックバックをもらっていたという印象を与えるが、安倍氏の元秘書は、
「安倍事務所では、派閥のパーティー券は売らないと決めていた」
と証言する。安倍氏は派閥からのノルマ分は、自身の政治団体から「清和政策研究会」に寄付という形で収めていた。このため、超過分のキックバックはありえなかったというわけだ。
安倍氏に食い込んでいた元NHK政治部記者でフリージャーナリストの岩田明子氏も夕刊フジに寄稿し、派閥会長に就任した安倍氏はキックバックで裏金化していたことに激怒し、やめるよう指示したとしている。
この支援者がパーティー券を購入していたとしたら、それは派閥のパーティーではなく安倍氏の個人パーティーとなり、報道の前提が全く異なることになる。
「報道特集」は安倍政権を批判する番組作りをしていたが、今回もあらかじめストーリーを描いて、印象操作を流したのか。もう一度、この「支援者」なる人物に、本当に派閥のパーティー券だったのかを問い直してはどうか。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)