芸能

原田芳雄の長男が明かす「死の直前の舞台挨拶」に登場した「1%の意地」/壮絶「芸能スキャンダル会見」秘史

 もし自分が病魔に襲われ、日に日に弱くなっていったとしたら…。その姿を人前では見せたくない、そう思うのが常なのではないだろうか。しかし、最後の最後まで役者として、その生きざまを公の場で、自らの意思で見せ続けた男がいた。それが11年7月19日に肺炎で亡くなった原田芳雄だ。

 原田は亡くなる8日前の7月11日、自身が企画・主演する映画「大鹿村騒動記」(7月16日公開)の完成披露試写会に、車いすに乗りながら登壇。舞台挨拶では、やせ細った姿で声が出せない本人に代わり、盟友の石橋蓮司がメッセージを代読した。詰めかけた客席をゆっくりと見つめながら目を潤ませる姿に、まさに映画人としての執念を感じたものである。

 原田に大腸ガンが見つかったのは、08年だ。無事に手術は成功したが、ガンは少しずつ進行し、腸閉塞を併発。さらに吸引のために入れた管にむせて誤嚥性肺炎を起こし、点滴だけの日々を余儀なくされる。それでも、舞台挨拶に臨んだ原田について、映画関係者はこう語った。

「入院中の容体がよくないことは聞いていたので、我々としても、舞台挨拶は無理だろうと思っていたのですが、原田さんは『みなさんに見てほしいから、どんなことがあっても行く』と。舞台袖には医師や看護師が付き添い、万が一に備えての登壇でした。たとえ命を削ることになっても、この舞台挨拶だけは務めたい、そんな覚悟で臨んだ舞台でしたね」

 しかしそれが、人前での最後の姿となってしまう。7月21日、東京・青山葬儀所でしめやかに営まれた原田の通夜。長男でミュージシャンの原田喧太は、記者会見でこう述懐した。

「最後の舞台挨拶も、担当の先生から『99%無理だ』と言われていましたが、本人がすごく頑張って、その真剣さに心打たれて、なんとか出させていただきました。本人はとことん、役者ということに懸けてましたから。病床でも『まだまだやりたいことはいっぱいあるんだ』と言っていました」

 翌22日正午から行われた告別式では、遺作となった「大鹿村騒動記」で共演した石橋が、涙声になりながら弔辞を捧げ、弔問客の涙を誘った。

「弔辞とは故人の業績を称え、人に伝えるとあったが、今、芳雄の業績を称えたくもないし、人に伝えたくもない。ただただ、ただただお前が今、ここにいてくれればいい。お前が今ここにいて、これは冗談だと言ってほしい。それが芳雄、家族に対して、また俺たち仲間に対しての、最大の業績だよ」

 見事な役者人生だった。

(山川敦司)

1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。

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