芸能

葉加瀬太郎が「顔面麻痺」に襲われた「ラムゼイハント症候群」Q&A…予防法と感染経路と誤診回避術

 9月7日から始まった全国ツアーの告知で、バイオリニストの葉加瀬太郎が「ラムゼイハント症候群」で顔の半分が麻痺した、と告白したことにショックを受けた人は多いのではないか。

 葉加瀬を襲ったラムゼイハント症候群は、中高年世代が子供の頃に感染した水ぼうそう、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で発症する。水ぼうそうが治癒後も体内に潜んでおり、加齢や過労による抵抗力が落ちたタイミングで神経に沿って暴れ始め、帯状疱疹やラムゼイハント症候群を引き起こす。

 症状は顔面麻痺のほか、めまいや聴覚障害。グラミー賞歌手のジャスティン・ビーバーが発症した際には、長期休養とツアー延期を発表した。葉加瀬は9月7日のライブで演奏に支障をきたすどころか、いつにも増して情熱的な演奏を披露しており、聴覚に影響が出なかったことは不幸中の幸いと言えるだろう。

 葉加瀬の罹患で世に知られることになったラムゼイハント症候群については、SNSや一部テレビ情報番組では誤解が広まっているので、ここできちんと整理しておきたい。

【予防法はあるか】

 現在、水痘・帯状疱疹ウイルスのワクチンは、1歳児に2回接種が義務付けられる定期接種となっている。だが、それ以前にワクチンを1回接種した子供や若者、もしくは過去に水ぼうそうにかかった中高年に「生涯免疫」がついているわけではない。

 先に書いた通り、過去に水ぼうそうにかかった人は体内にウイルスが生息しており、帯状疱疹やラムゼイハント症候群の発症を防ぐには、ワクチン接種が有効な手段となる。接種費用は8000円から2万円と幅があるが、自治体によってはワクチン接種助成をしているので、自治体の公式サイトなどを確認してほしい。

 少子高齢化が進む日本では、国民の2人に1人は50歳以上。この世代は破傷風ワクチンや水痘・帯状疱疹のワクチン接種機会がなかった。ところが日本医師会はなぜか、これらのワクチン接種啓発よりも、年間1万人が発症する「子宮頸がんワクチン」のテレビCMを展開、ゴリ押しに余念がない。国民のワクチン接種の優先順位に、公衆衛生や医学的根拠とは別次元の手心を加えるほど、医者や医師会、国会議員、官僚にとって「うまみ」があるのだろう。

【感染する?】

 ラムゼイハント症候群では耳の周り、帯状疱疹では全身の皮膚に水膨れや潰瘍ができることがあり、これらに触れるとウイルスが付着する。過去に水ぼうそうにかかった中高年は免疫があるので、ウイルスが手に付着したくらいでは感染リスクは少ないが、唾液にもウイルスは含まれているため、人工呼吸器を使っているような重症患者、白血病やガンで免疫力が落ちた人、ワクチン未接種の乳幼児は感染、発症することがある。

 家庭内や職場では、発症者はお風呂を最後に使う、食器やタオルは共用しない、使い捨て手袋を使う、洗濯は通常コースを使う、といった日常の感染対策を怠らないこと。赤ん坊や子供は麻疹風疹ワクチンとともに、1歳の誕生日を迎えたらすぐの接種を検討してほしい。遅くとも保育園入園前に接種しておきたい。

【すぐに診断できるのか、そして治るのか】

 早期発見して、直ちに抗ウイルス薬による投薬治療を始めれば麻痺や耳鳴り、めまいなどの症状は少しずつ改善していくが、後遺症が残ることがある。

 葉加瀬のように顔面麻痺という「わかりやすい症状」が出ると、まず脳梗塞を疑い、救急外来で頭部CTや血液検査をするので発見しやすい。ところが一般ピープルが耳や目の違和感、耳鳴りやめまいを訴えて病院を受診しても、めまいを発症する病気は脳神経外科から精神科、婦人科系まで幅広いので、慇懃無礼な対応に終始、「たらい回し」されることがある。

 テレビやSNSで医師が発信する「開業医を受診すればすぐ診断できる」というのは、患者の視点からすると「ウソ」。特に「在宅診療」「訪問診療」や、専門医資格もないのにザックリと「内科・小児科」を標榜している開業医は玉石混合で、麻疹や水ぼうそうを見たこともないヤブ医者が混ざっている。

 これは筆者の実体験に基づいており、過去3年に急に目まいを発症、耳鼻科をたらい回しにされた友人知人に皮膚科受診を勧めたらラムゼイハント症候群だった、という「誤診」が2件あった。それくらい、今どきの開業医のレベルは低下し、老人医療利権と新型コロナ利権でドップリと肥えたせいか、傲慢ぶりが横行している。

 もし、めまいや耳鳴りを急に発症し、かかりつけ医や開業医を受診してたらい回しにされた場合は、以下の3つの方法を検討するといい。

①皮膚科を受診

②別の耳鼻科を受診

③それでもラチがあかないなら、美容皮膚科で抗ウイルス薬の自費処方を相談

 念を押しておくが、あくまで急にめまいや耳鳴りを発症した人が医者にたらい回しされた場合の緊急自衛策である。

(那須優子/医療ジャーナリスト)

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