4年ぶり3度目の出場を果たし、大会4日目に登場する創成館(長崎)。投打のバランスがよく総合力は◎評価。昨秋の明治神宮大会では大阪桐蔭を撃破していることもあって、優勝候補の一角としてその名が挙がり、長崎県勢としては2度目の春選抜制覇の期待がかかっている。
県勢として春夏通じて甲子園初制覇を成し遂げたのが2009年第81回春の選抜での清峰だった。前年秋の九州大会で優勝し、今回の創成館同様、V候補として有力視されていた。その原動力となったのが大会屈指の右腕と言われたエース・今村猛(広島東洋)である。最速152キロの直球に加えスライダー、カットボールにも威力があり、失点を最小限に抑える巧みな投球術も光っていた。
初戦の日本文理(新潟)戦から今村の右腕は冴えた。被安打は7本も最速148キロをマークし、12奪三振。打っても第1打席に選抜大会通算600号となる本塁打をバックスクリーン右へ放り込むなど、4‐0の完封勝ち。2回戦の福知山成美(京都)は投手戦となったが、これも11奪三振。1‐0で2試合連続の完封勝ちを達成する。準々決勝の箕島(和歌山)戦は8‐2の大勝。今村自身は8回を投げて被安打4。3試合連続の二ケタ奪三振となる10個を記録し無失点でマウンドを降りる余裕を見せた。
3試合連続無失点投球を続けてきた今村が初めて失点を喫したのが準決勝の報徳学園(兵庫)。4‐1で勝利したが、ここまで3試合続けてきた二ケタ奪三振にはあと1つ足りずに9個で終わった。それでもここまでの4試合で35イニングを投げ、被安打25の42奪三振で失点はわずか1。大会No.1右腕の名に恥じない投球内容だった。
決勝戦の相手は大会No.1左腕の称号を得ていた菊池雄星(埼玉西武)擁する花巻東(岩手)。菊池もこの大会で2試合連続完封を達成するなど、ここまでの4試合で31イニングを投げて被安打18の37奪三振。自責点はわずかに2点で、最速は何と152キロをマークしていた。
大方の予想通り、試合は投手戦となった。放ったヒットは両軍ともに7本ずつ。奪われた三振も清峰は4、花巻東は5と差がつかなかった。勝負を分けたのは四死球だった。7回表の清峰の攻撃。2死無走者から菊池は無造作に四球を出してしまう。この場面で清峰は今大会、まったく当たっていなかった9番・橋本洋俊がセンター頭上を越える二塁打を放って虎の子の1点を先制したのだ。9回裏、清峰は2アウト一、二塁のビンチを迎えるも、最後は今村がレフトフライに打ち取り1‐0。実は清峰はこの3年前の選抜でも決勝戦進出を果たしていたが、強豪・横浜の前に0‐21の歴史的大敗を喫していた。みごと3年越しのリベンジを達成した清峰は春夏通じて長崎県に初めて甲子園優勝をもたらしたのである。
(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=