そのA氏が自ら命を絶ったのは3月7日のこと。兵庫県警は遺書のようなメモが残されていた事実を明らかにしており、A氏に決裁文書の書き換えなどを指示したキャリア官僚の実名や経緯などが記されているとの情報もある。だが一方で、A氏の親族からは「押収されたメモの中身は家族にも知らされていない」との声が上がっているという。先の近畿財務局関係者が続ける。
「神戸市内にある自宅マンションで首をつっての自殺だったそうですが、正義感の強い真面目な男で知られていたことから、本省内では『A氏は書き換え疑惑をスクープした朝日新聞のネタ元の一人だったのではないか』との憶測も飛び交っている。また、A氏と親しかった近畿財務局職員の間からは『自殺する前日、A氏は大阪地検特捜部による任意の事情聴取を受けていたようだ』との気になる情報も流れています」
A氏の自殺がマスコミで報じられたのは2日後の3月9日。同日、当時の本省理財局長だった佐川宣寿国税庁長官(60)が同職を電撃辞任し、3日後の12日には財務省が決裁文書改ざん、偽造の事実を認める、という急展開を見せたのである。
この間の事情に詳しい財務省出身の自民党議員は、
「A氏の自殺については、官邸も本省も3月7日当日に詳しい情報を得ており、当初、本省は『決裁文書の偽造は近畿財務局がやったこと』として幕引きを図るつもりだった。状況が一変したのは2日後。実は佐川氏はみずから辞任したわけではなく、官邸が主導した事実上の更迭劇だった。そこで『官邸は財務省に責任を押しつけて逃げ切ろうとしている』と見て取った本省が、文書偽造の事実を認めるという捨て身の反撃に出た」
としたうえで、次のように舞台裏を暴露するのだ。
「本省が偽造を認めれば当然、なぜ偽造したのか、誰が指示したのか、が次の問題として浮上し、官邸も疑惑の矢面に立たされる。要するに、A氏の自殺が官邸と本省に対する第一の『自爆テロ』だったとすれば、本省が偽造の事実を認めたのは、官邸に対する第二の『自爆テロ』だ。財務省内には今、安倍政権のためにウソにウソを重ね、違法行為にまで手を染めてきたのに、土壇場で『悪いのは財務省、というのはないだろう』との深い怨嗟の声が渦巻いている‥‥」
さらにこの財務省出身議員によれば、マスコミで取りざたされている「忖度」にしても、官邸が「文書を偽造しろ」などと露骨に命じることなどありえないという。つまり、財務省を動かしたければ官邸の密使が「森友の件、どうなってる? 総理も気にされているようだから」などと耳打ちすれば十分であり、事実上、財務省による忖度は安倍総理率いる官邸の厳命の結果にほかならないというのだ。