舌の色は健康のバロメーターだという。今年1月にも、順天堂大学による興味深い研究結果が報じられた。同大学が、愛媛県東温市で行った調査の結果、舌が“黄色”の人は白色の人に比べて糖尿病であることが多いことがわかった、と発表したのだ。東洋医学家で鍼灸師の根元祥子氏が言う。
「東洋医学では“舌は内臓を映す鏡”ともいわれているほど身体の血液循環の状態を映しだす。“舌診(ぜっしん)”といい中医学・漢方の重要な診断方法の一つです」
舌診とは、舌の色や形や舌苔(ぜったい=舌表面の白っぽい付着物)などで体の異常を見分けるもの。根元祥子さんが言う。
「体調の変化が真っ先に現れやすいのが口の中。健康な色は、薄いピンクにうっすらと白く見えるような状態。それが、舌に白く苔が生えたようになった状態になると“舌苔”という状態です。これは舌の表面の細胞が角質化、口中の細菌が繁殖した状態を言います。口の中の細菌は300~700種類で数は1000~2000億。ひどい場合には6000億以上とも言われているんです」
また、食べ過ぎや飲み過ぎ、タバコの吸い過ぎなどの時には、舌苔がボロボロの状態になる。これは消化器系に負担がかかっている証拠だともいうのだ。そして舌の色。淡白で正常より淡いものは血行が悪く、血液や栄養が舌まで充分に届いていない状態だ。
逆に血液の流れが速いと正常より赤い、鮮紅色になり“紅舌”と呼ばれる。一方、前出の根本さんは冒頭の順天堂大学による“舌の色が黄色い人は糖尿病の人が多い”という調査結果についてはこう話す。
「中国の医学書には“黄色”というのが記されていません。中国の医学書における、舌が乾いて赤みがある紫の場合のことだと思います。余分な熱が体内にこもり、体液が失われている状態のことでしょう。これは、糖尿病の原因になります」
一方、重症な熱証(東洋医学で言う顔が赤く汗っかきでほてりが強い体質のこと)では舌は深紅色になり、青色・紫色または暗色になるものを“青紫舌”といい、淤血(おけつ=血の流れが悪くなることで、血が新鮮さを失う状態)を引き起こす。淤血は様々な病気を引き起こす万病の元で、放置して悪化すると、高血圧を始め、脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な病気の原因となる。端的に言えば、東洋医学では血行の良し悪しがすべての基準。それがいちばんよく現れるのが舌ということなのだ。
朝一番に舌の色・形・苔をチェックし、健康管理に務めたい。
(谷川渓)