実は、歯周病菌はさまざまな生活習慣病と深く関わっている。その代表格が糖尿病だというのだ。
「糖尿病治療にはHbA1cという検査項目があるのですが、これをほんの0.1ポイント下げるのがすごく難しい。ところが歯周病治療を行った糖尿病患者さんの多くにHbA1cの下降が見られるというデータがあるんです。つまり歯周病菌が、インシュリンの分泌や血糖値の変化などに関与しているということ。それが、歯周病が糖尿病の『6番目の合併症』と言われるゆえんなんです」
さらに、歯周病菌や菌が作り出す毒素が血管の中に入り込むと、全身の臓器、心臓などに歯周病菌が付着する場合があるといい、
「菌が作り出す物質によって血管が痛めつけられ、硬化したり細くなったりすれば、結果、動脈硬化を起こし、それが心筋梗塞や脳梗塞など、死に直結する病気を誘発する引き金になることもあるんです」
知らない間に歯が抜け落ち、ともすれば突然死を誘発する。ところが籾山医師いわく、最大にして唯一の予防法であるはずの歯磨きに、実は深刻な問題があるというのである。寝不足が続いたり深酒した翌日、なんとなく歯茎に違和感を感じるのは記者だけではないだろう。
「現代人は常にいろいろなストレスにさらされているため、免疫力や抵抗力は人によってすごくムラがある。ただ、日本人には生活習慣としてほぼ100%、歯磨きが定着しています。それでも成人の8割が歯周病を持っているということは、ふだん行っている歯磨きのしかたが間違っているから。人によって免疫力は違うので、同じ量のバイ菌が残っていた場合、免疫力、抵抗力の弱い人はわずかな量で病気を引き起こす可能性があるということです」
その最大の間違いが、歯磨き粉の使用にあるという。
「歯磨きの目的はプラークを取り除くことと同時に、血液の循環をよくすることですが、市販の歯磨き粉にはほぼ、『ラウリル硫酸ナトリウム』という合成界面活性剤が入っている。これは台所で使う合成洗剤であり、歯磨き粉はそれに味と香りを付けたものなんです。台所洗剤を付けて素手で洗い物をしていると手荒れすることがありますが、これを敏感な歯肉や粘膜に使ったらどうなるか。1日3回もやれば、治るものも治らないのは当然のことです」
百害あって一利なし。確かに記者が現在使っている歯磨き粉のパッケージには「歯磨き用リン酸水素カルシウム・ソルビット液などのほか、ラウリル硫酸ナトリウム」という成分表示がある。さらに記者は歯磨きのあと、仕上げにとデンタルリンスによる、クチュクチュうがいも実行しているのだが、これまた問題大アリで、
「簡単に言うと、生ゴミたっぷりのゴミ箱のニオイを消すために、消臭スプレーを吹きかけているのと一緒。汚れが残っているのにさっぱりするという気分が味わえて、しかも成分はアルコール系のものが多く、刺激も強い。これも百害あって一利なしです」
いやはや、事実なら、これまで常識だった「歯周病予防=歯磨き」という構図が崩れ去ってしまうではないか。