春の選抜で初めて北陸のチームが優勝したのは2015年の第87回大会のこと。エース兼4番として獅子奮迅の活躍を見せた平沼翔太(北海道日本ハム)擁する敦賀気比(福井)がそのチームである。平沼はこの前年夏の甲子園でも2年生ながらエースとして3試合で完投勝利を収め、チームのベスト4進出に貢献していた。その平沼がひと冬越えてさらに成長してふたたび甲子園へと戻ってきたのである。その右腕が奈良大付との初戦から全開。与えたヒットは6回表の1本のみ。打線も計8安打で3点を叩き出し、3‐0の完封勝利で好発進したのである。
続く2回戦は前年秋の明治神宮大会覇者の仙台育英(宮城)。優勝候補同士の大一番となった。相手のエース・佐藤世那(オリックス)もプロ注目の好投手である。試合は予想通り両エースの投げ合いとなり、5回表を終わって両軍ともに0行進。だが、その裏に試合が動いた。敦賀気比は2死二、三塁のチャンスから3番・林中勇輝が右適時打を放ち、2点の先制に成功したのだ。対する仙台育英も7回8回とチャンスを作るが平沼が後続を断ち、得点を許さなかった。結局、9回表に1点を返されるも、そのまま2‐1で逃げ切ったのだった。両投手はともに被安打5の好投を見せたが、要所でのヒットの有無が試合の勝敗を分けた形となった。
準々決勝の静岡戦も熱戦となった。敦賀気比は平沼の先制2ランなどで3点を先攻するも、その後は追加点が奪えない展開に。すると5回表にスクイズとエラーで一気に同点とされてしまった。しかし迎えた9回裏、2死一、二塁から3番・林中がサヨナラタイムリー二塁打。劇的な幕切れでベスト4に進出したのである。
迎えた準決勝は強豪・大阪桐蔭と対戦。実はこの前年夏の準決勝と同じカードであった。その時は初回に5点を先制するも、平沼が乱調で打撃戦に持ち込まれ、9‐15と壮絶な敗戦を喫した因縁の相手。接戦が予想されたが、雪辱に燃える敦賀気比の打線が大爆発。6番・松本哲幣が大会史上初となる2打席連続満塁ホームランを放ち、個人1試合最多打点8を記録するなど2回を終わり10‐0。投げては平沼が強打の大阪桐蔭打線を被安打4に抑えた。結局、11‐0の大差で圧勝し、前年夏のリベンジを果たしたのである。
決勝戦は北海道・東海大四との対戦となった。試合は1回の表裏にそれぞれ1点ずつを取り合ったあとは投手戦に突入。迎えた終盤8回裏。敦賀気比は前日の大阪桐蔭戦で大活躍を見せた6番の松本が今度はレフトスタンドへ勝ち越しの2ラン。この2点を平沼が守って3‐1。敦賀気比が初優勝を遂げたのである。福井県勢としては1978年の春の選抜第50回大会で福井商が準優勝に輝いていたが、それを越える形となった。同時にこれは春夏通じて北陸勢、悲願の初優勝でもあった。
(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=