以前、ダンカンさんのお母様が亡くなられ、お通夜への出席を表明した殿が、「じゃーよ、バスでも貸し切って、軍団と宴会がてら、ワイワイやりながらダンカンとこのお通夜に行くか!」と言い放って、そのとおり実行したエピソードを書いた際、文芸評論家の杉江松恋さんが〈非常識と怒ってはいけない。芸人の常識は、世間の非常識だから〉と、解説をしてくれたことがありました。そうです。殿とその弟子の我々「たけし軍団」は、まったくもって世間様とはずれまくっている、はっきりと非常識を好む、実に不謹慎な団体なのです。そんな殿や軍団は「誰かが入院した」と聞くと、何かしら非常識なことをせずにはいられません。
過去には、井手らっきょさんが喘息で入院した際、お見舞いにやってきた殿が、井手さんにバレないよう酸素吸入器のチューブをずらし、酸素の代わりにタバコの煙を送り込んで殺しかけたことがありました。
また、三又又三さんが入院した際、見舞いにやってきたダンカンさんは、三又さんが検査で部屋を留守にしている間、個室の病室に、天井から吊るすタイプの“赤ちゃん用ガラガラおもちゃ”を勝手にセットし、さらに、なぜかつがいの十姉妹が入った鳥カゴを枕元に置き、黙って帰ってきたこともありました。
で、ここからが本題です。
7月の頭、TBS系の殿の番組の作家をしている、〆さばアタル兄さんが、頭痛を訴え病院に行くと、そのまま緊急入院となり、諸々あって1カ月程入院をすることになりました。
で、先ごろ、すっかり元気になり退院と相なったのですが、アタルさんが入院していた間、殿が発した“頭ネタ”が、やはり不謹慎で最高でした。
まず、わたくしが「殿、アタルさんが頭の病気で入院されました」と、わざと頭を強調して報告すると、殿はすかさず、
「頭? なんだ、あいつはロボトミー手術でも受けるのか?」
と、今では禁止になっている“言うことを聞かない人間の脳の前頭葉を切断しておとなしくさせる、悪名高き人権無視な手術”名を例に出してふざけだすと、もうそこから先は、
「あいつ、退院したら芸名をロボトミー・アタルに変えるか?」
だの、ロボトミー手術を世に知らしめた映画「カッコーの巣の上で」をもじり、
「やっぱりあいつの芸名は、カッコーのアタルだな」
等々、とにかくノリノリでふざけだしたのです。
そして1カ月がたち、「殿、アタルさんが明日退院です」と報告すると、
「あいつが退院して、TBSに来ないで、全然関係ない日テレのほうに行っちゃったら、もう無視してほっとこう。もし、TBSにちゃんとたどり着いたなら、ロボトミーでおとなしくなってても、そこは見て見ぬふりをして、また今までどおり付き合ってやろう」
と、提案したのでした。世間の皆様、しつこいようですが、くれぐれも怒らないでください。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!