九州大学大学院歯学研究院の武洲准教授と倪軍軍助教の研究グループは、中国青海省人民病院との共同研究において、ブラジル産プロポリスが中国チベット高原に住む健常な高齢者の認知機能低下並びに全身性炎症の改善効果をもたらすことを明らかにした。臨床研究の成果は、オランダの国際学術誌『Journal of Alzheimer’s disease』にオンライン掲載されている。
武洲准教授らは、海抜2300メートル以上で低酸素環境のチベット高原に住む高齢者が、平地住民より認知機能が著しく低下することに着目。効果の検証では、まず対象者60名(平均年齢72.8歳)をプロポリスとプラセボの2群に分けて経口投与を行い、認識機能と全身性炎症を評価。プラセボ群では「24カ月で全身性炎症の悪化に伴い認識機能が低下した」一方、プロポリス群では「12カ月以上の摂取は全身性炎症を低下させるとともに認知低下を防ぐ」ことが確認されたという。
プロポリスは、ミツバチが植物源から集めた樹脂製混合物のこと。研究を助成してきた山田養蜂場によると、その品質は採取地の自然環境やミツバチの種類に左右されるといわれているそうだ。今回の研究に使われたのは、プロポリスのもととなる天然ハーブが多く自生するブラジル産。とくに希少植物で強力な抗菌作用があるといわれるアレクリン(学名バッカリス・ドゥラクンクリフォリア)を主成分とし、世界的にも評価の高い「グリーン系プロポリス」を3種類の抽出法で抽出・精製したプロポリスエキス『プロポリス300』が服用されたという。
武洲准教授は「天然物質であるプロポリスを用いた細胞レベルの研究成果がヒトで実証されました。持続的なプロポリスの摂取も認知症の予防に期待できそうです」とコメント。認知機能の低下や加齢に連れて有病率が上がるといわれる「認知症」は、超高齢化社会を迎える日本では深刻な社会問題だ。親の介護に悩むアサ芸世代も多いことだろう。根本的な治療法がない認知症にこの研究成果が救いとなるか、今後も注視していきたい。