家族や友人のみならず、自分のこともわからなくなり、生活にも大きな支障を来す──。誰もがそうなる危険性を秘める認知症。健康な人生を全うするために、ふだんの生活でできることはあるのか。専門家が「脳活性化の秘策」をズバッと14選抜!
予備軍も含め、その数は800万人と言われる認知症。そんな認知症を高血圧症や糖尿病同様、「生活習慣病の一つ」と捉え、予防を呼びかけるのが、「ボケないのは、どっち?」(リンダパブリッシャーズの本)を上梓した米山医院院長で、神経内科医の米山公啓氏だ。まずは「生活習慣・仕事」編で、今日からできる脳の活性化&認知症予防法を伝授してもらおう。
【1】出かけるなら「結婚式」と「同窓会」どっち?
「記憶というのは、新しい情報を脳にインプットする『記銘』と、それを脳に保存する『保持』、保持した情報を思い出す『想起』という3つの機能から成り立っていて、短期記憶をつかさどるのが海馬、長期記憶は大脳皮質が担当しています。結婚式という新しい情報は『記銘』。一方、昔の仲間と会うことは『想起』となる。ところが、加齢とともに『記銘』という機能は衰えるため、意図的に鍛えてやらないと過去の記憶の中だけで生きるようになってしまうんですね。ですから、たまたま同窓会と結婚式の予定が重なってしまったら、迷わず結婚式に出かけること。懐かしい昔話より、新しい出会いと経験が重要です」
脳の活性化には睡眠も重要な役割を担う。
【2】「不規則でも眠たい時に寝る」か「時間を決めて、眠らなくても布団に入る」か?
「『早く寝なきゃ』と布団に入って目を閉じても、なかなか寝つけないし、ますます眠気が遠のく悪循環に陥ります。睡眠に焦りは禁物。ですから、本来はウトウトし始めたらベッドに向かうくらいのほうが、脳の活性化には最適と言えるでしょう。睡眠は脳に保護的に働き、活性化を促す効果があるため、睡眠中の脳は運動しているのと同じ状態にあるんです」
人間も動物。やはり自然が一番というわけか。次に、
【3】テレビ番組を見るなら「バラエティ」か「ドキュメンタリー」か?
「バラエティはどうしても同じようなネタを同じようなメンバーで、というパターンが多いため、驚くような大発見は少ない。したがって、脳にとっての刺激も弱いはずです。ドキュメンタリーには『新たな発見』や『感動』があります。好みにもよりますが、そういう点から考えると、ドキュメンタリーがお勧めです」
テレビを見ながらの晩酌となれば、ちょっとしたつまみが欲しくなる。
【4】酒のアテなら「野菜の煮物」と「鶏のから揚げ」どっちを食べるべきか?
「野菜には抗酸化物質のほか、ビタミンCやEがたくさん含まれているものが多く、疫学的には野菜を摂取したほうが認知症になりにくいというデータがあります。できるだけ、野菜を多く含むつまみをバランスよく食べることですね」
ちなみに、焼酎は日本酒よりカロリーが少なく体にいい、とのイメージがあるが、
「これはまったく根拠がない話。アルコールに関して問題になるのは濃度です。だから飲める人が適量飲めばプラスになるし、飲めない人が飲むとリスクになります。あくまでも適量が肝心ということです」