食品衛生法第4条2項によれば、添加物とは〈食品の製造過程において、または食品の加工、もしくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤、そのほかの方法によって使用するものをいう〉とあるが、小薮氏は、
「私が考える添加物は、通常そのまま食べたり飲んだりしないもので、食品を製造する時に味や色を付けるとか、保存性をよくするといった、何らかの目的があって使用する物質。ですから前提には、安全性がきちんと確保されていなければなりません。ところが、添加物の安全性はラットなどの動物で検証されているだけで、人間での安全性はまったく検証されていない。そこが一番の問題なんです」
添加物を巡っては、これまで発ガン性があるものや、生活習慣病を引き起こす物質もあることが報じられている。
Aさん一家の休日も終わりに近づいた。買い物もしたし、食事も楽しんだ。
「パパ、帰りにこの間、駅前にオープンしたケーキ屋さんでクッキーを買って行きましょうよ!」
と言う妻に連れられ、ケーキ屋へ。そこで購入したのが、バターがたっぷり入ったクッキーとクロワッサン。小薮氏が解説する。
「マーガリンやショートニング、ファットスプレット(冷たい状態でもよく伸びるバター状の食品)に使用されるのが、水素添加油脂。これは菜種油など、常温の液体の油に触媒を加え、水素を吹き込むことにより、しだいに固まってできるもので、れっきとした化学合成品です。そして水素を結合させる工程で生成されるのが、トランス脂肪酸。私は『トランス死亡酸』と呼んでいますが、これを摂り続けると、人体に多大な悪影響があるんです」
トランス脂肪酸を摂取し続けると、悪玉(LDL)コレステロールが増加し、善玉(HDL)コレステロールが減少する。結果、心筋梗塞や動脈硬化を誘発し、死に至る危険性が増すという。
「さらに、トランス脂肪酸はアトピーなど、ある種のアレルギーの原因になったり、女性の場合は不妊の原因になるとされます。ですから、マーガリンやショートニングなどを使用した食品は危険です。特にショートニングはサクサク感を出すため、いろいろな菓子類に頻繁に使用されているので、できれば口にしないことをお勧めします」
さて、Aさんの外食生活はいかがだっただろうか。
ランチタイムに見つけた激安ステーキは注射針を使った加工肉で、100円寿司はまがい物。さらには居酒屋で出てくるキャベツは「混ぜるな、危険!」と書かれた家庭用漂白剤と同じ効果を持つ液体で洗浄され、おいしそうなクッキーには、突然死を引き起こす「トランス死亡酸」が含有。我々はいったい何を食べたらいいのやら、と暗い気分になってくる。
河岸氏が言う。
「一昔前、外食といえば、何か特別な日の特別な食事だったはず。そしてお店にしても、職人や調理師が修業で磨いた技、その店ならではの味を提供してくれる場所だった。ところが、それがチェーン化、セントラルキッチン化が進んだことにより、全国均一のそっけない味、魅力のない味に変化してしまった。家庭よりもおいしい料理が食べられないだけでなく、添加物だらけで安心・安全の保証がないとなれば、努力しない店は淘汰されていくだけ。結局はお客さんのことを考えている店は生き残り、自分たちの利益を最優先する店は潰れていくことになるでしょう」
当然ながら、全部が全部、ズルくヤバイ店だというわけではない。だが、現実問題として、ズルくヤバイ店がそこかしこにあり、その店で出されたものを口にしたことで、確実に体にはマイナスになり、結果、寿命をも縮めかねない健康被害の可能性が高まる。これではたまったものではない。
安くてうまいものを求め続けてきた消費者。その悪循環が「ズルくヤバイ店」を生み出しているという側面もあるが、やはり「安い、うまい、健康にいい」などという都合のいいものはないということだろう。