さて、レタスと白菜、ハムと挽き肉、サンマもカゴに入れた。あとは「お一人様2本まで」という特売品の「本醸造 減塩醤油」と「マヨネーズ」を買えば、お使いは終了だ。小薮氏が続ける。
「本醸造と書いてあると、消費者は添加物などを使用していない、発酵だけで製造されているものと勘違いしますが、実は醤油の場合、添加物を使用しても本醸造を名乗ってかまわないという決まりになっています。そのため、原材料として天然ものではないビタミンB1ラウリル硫酸塩という保存料が使用されています。他にもDLリンゴ酸やDL酒石酸など、DLと書いてある場合は、天然型でないものが約50%含まれています」
なんと、ビタミンが保存料だったとは衝撃だ。小薮氏は続けて、
「よくビタミンC強化食品とか、ビタミンE添加といったキャッチコピーのついた食品がありますが、ビタミンが入っているから体によさそう、と思うのは大間違い。加工食品で使われているビタミンはほとんどが化学合成物質で、カロテンは主に着色、ビタミンC、ビタミンEは酸化防止目的で使用される場合が多く、これを栄養強化目的と思わせて販売している。消費者はなにも知らず、合成添加物を食べさせられているわけです」
コレステロールゼロをうたったマヨネーズにも、添加物がタップリ含まれているという。小薮氏が解説する。
「食品表示基準があり、マヨネーズには卵の全部、もしくは卵黄の使用が条件になっています。ところが卵黄にはコレステロールが含まれているため、使用できない。だから名前はマヨネーズではなくマヨネーズ風ドレッシング。粘りを出すためにキサンタンガンという増粘剤が使用されていますが、これは細菌を培養して製造したもので、培養の際に生成されるいろいろな物質が不純物として混ざっています。また、合成着色料として使われているカロテン色素は、ニンジンなどに含まれるカロテンとは無関係なもの。つまり『マヨネーズもどき』には、添加物がふんだんに含まれているということになります」
知れば知るほど、何を口にしていいのか考え込んでしまうが、最後に小薮氏が言う。
「食品メーカーは知恵をしぼり、見栄えがよくおいしそうな食品を日々研究し、売り上げを伸ばそうと必死です。しかし業界の姿勢からは、消費者の健康に配慮する姿はほとんど見られません。しかも食の安全に責任を持つべき厚生労働省は、添加物まみれの実態に無関心です。そうなれば、消費者一人一人が賢くなるしかない。専門的でなくてもいいので、この食品にはどんな添加物が含まれていて、それを食べ続けるとどんなリスクがあるのかを知っておくこと。それが寿命を縮めない唯一の手段になるはずです」
〈買い物終了。これから帰る。今日は大根おろしたっぷりのサンマとハムサラダでよろしく〉
妻にメールした後、足取りも軽く家路を急ぐオヤジ記者。その能天気な後ろ姿に危険が忍び寄っていることも知らずに‥‥。