テリー 男爵は7年前に結婚しているんだね。ということは、もう全盛期の人気ではなかったと思うんだけど、奥さんは大丈夫だったんだ?
山田 はい、そういうのはあんまり気にしないタイプみたいで。
テリー いい奥さんじゃないですか。長いおつきあいだったの?
山田 今の嫁と結婚する前に、けっこう長くつきあった女性がいたんですが、その子はサッカー選手に寝取られちゃいましたね。
テリー おっ、いいねェ。夜のストライカーがいたんだ。
山田 うまいこと言いますね(笑)。やっと売れて、つきあいも長いので「そろそろ結婚せな」と一念発起して、19万円の部屋を借りて、向こうの親にも会って、いよいよというタイミングで、彼女の浮気を知ってしまったんです。
テリー それは、どういう経緯でわかったの?
山田 怪しいムードがあったもので、恥ずかしながら彼女の携帯を見てしまったんです。そしたら「この前の箱根旅行、楽しかったね」みたいなメールが見知らぬ男から来ていたんですよ。問い詰めたら、1年間ガッツリ浮気されていました。
テリー で、具体的に何か行動に出たの?
山田 とりあえず、相手の男性に会いに行きました。彼女の携帯から電話番号を控えて連絡して‥‥。
テリー 「ルネッサ~ンス!」と。
山田 浮気を問い詰める電話の第一声がそれって、おかしいですよ(笑)。相手は社会人のサッカー選手だったんですけど、まだその頃は忙しかった仕事の合間をなんとか縫って会いに行って、彼が乗ってきた営業車の中で話をしました。
テリー フフフ、おもしろいなァ。
山田 やっぱりお好きですね、こういう話が(笑)。で、話してみると、ごく普通の若者で、けっこういいヤツなんですよ。それに、どちらかというと、彼女のほうから誘ったらしいんです。だから「わかった。あとは彼女の判断に任せよう。それで恨みっこなしや」と。そしたら彼女、迷わずそいつを選んだんです。
テリー ハハハ、即決とはキツイね。
山田 しかも、何が腹立つって、箱根旅行の3日ぐらい前に、僕はけっこうな金額の時計を彼女にプレゼントしているんですよ。ということは、僕が買った高い腕時計で、浮気旅行の待ち合わせ時間を確認したんやと。それに気づいて、めっちゃ腹が立ちました。
テリー でも、それがあって今の奥さんと結婚できたんだから、結果オーライじゃない。奥さんも、今回の受賞は喜んでくれているんでしょう?
山田 いやー、やっぱり賞を獲るといろいろと違ってきますね。それまでも文章はいろいろなところで書かせていただいていましたけど、やはり慣れないもので四苦八苦して書いているわけですよ。で、忙しい時に嫁に「ごめん、ちょっとコーヒーいれて」と頼んだらしばらくしてコーヒーを持ってきた嫁が、それを机にドン!と置いて「作家気取りか!」と言われちゃいましたから(笑)。でも、賞を獲ってからは「気取り」はなくなりました。
テリー もう、立派な作家だものね。次は「先生」と呼ばれるようにならないと。
山田 嫁にそんなふうに呼ばれ始めたら、逆に怖いですよ。何か企んでいるんちゃうか、と疑います(笑)。