●ゲスト:山田ルイ53世(髭男爵)(やまだ・るい・53せい) 1975年、兵庫県生まれ。大学を中退して上京、東京NSCの3期生となる。99年、相方のひぐち君と「髭男爵」結成。しばらく普通の漫才をしていたが、2004年頃から男爵風の衣装をまとい、髭を生やしてネタをするように。06年、「M-1グランプリ」の準決勝に進出、知名度を上げる。その頃からネタのスタイルが受け始め、08年頃よりテレビ出演が急増する。15年8月、自身の半生をつづった初の著書「ヒキコモリ漂流記」(マガジンハウス)出版。16年12月より「新潮45」(新潮社)にて「一発屋芸人列伝」の連載を開始。レイザーラモンHG、コウメ太夫、ジョイマン、ムーディ勝山などの現在を取り上げたルポが高い評価を受け、「第24回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」の「作品賞」を受賞。5月31日、その連載をまとめた「一発屋芸人列伝」が新潮社より発売される。
ワイングラス片手に「ルネッサーンス!」というギャグで一世を風靡した、お笑いコンビ「髭男爵」の山田ルイ53世。最近では文筆活動で高い注目を浴び、このたび、自身を含む「一発屋芸人」をテーマにした新刊が発売される。その読み応えに、天才テリーも思わず乾杯!?
テリー 俺、何年か前にネットでたまたま男爵の書いた文章を読んだことがあって、「こんなにうまい文章を書けるのか」ってビックリしていたんですよ。
山田 ハハハ、僕のキャラじゃないですものね。
テリー さらに3月には、月刊誌に連載していた「一発屋芸人列伝」が「第24回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞したんだよね。おめでとうございます。
山田 ありがとうございます、連載もやっと書籍になったんですよ。10年ぐらい何の評価もされなかったので、マラソンを走ってて久しぶりに給水所にたどりついたみたいな気分です(笑)。
テリー 取材した皆さんについて、男爵はどういう印象を持っていたの?
山田 芸能界で一度成功を収めて、今は負けているかもしれませんが、その事実を飲み込んだまま潔く頑張っている。自分に厳しい目を向けている、僕がリスペクトしている人たちです。
テリー テツandトモ、レイザーラモンHG、コウメ太夫といった人選なんだけど、テツトモ、実は完全な勝ち組じゃない。営業でけっこう稼いでるでしょう。
山田 ええ、テツトモさんの笑いって老若男女全てをカバーしますから、営業は強くて、しかも普通に歌を歌うだけの“歌謡ショー”みたいなステージもされるんですよ(笑)。2人はもともと演歌歌手志望ですから、歌もうまいですし。
テリー うん、演目が広いのは強みになるよね。
山田 そういったステージのパッケージを、15分、30分、60分と持ち時間に合わせて使い分け、誰も飽きさせない。もう完璧なんです。
テリー だよな。だからテレビで見なくなったからって、別にダメなわけじゃない。コウメ太夫だって、アパート経営をしていて家賃収入があるんでしょう?
山田 テリーさん、よくご存じですね(笑)。皆さん、けっこうしっかりされているんです。
テリー 賢いよね。一時期とはいえ、月に数百万とか稼いでいたわけだから、それをもとに店を持っていたりしてさ。髭男爵も、かなり稼いだんでしょう?
山田 いえいえ、小島よしお君なんかは切手の図案になるぐらい売れたし、レイザーラモンHGさんもすごかった。ああいう人たちは一発どころか二発扱いですけれど、僕らやジョイマンあたりは一発どころか「0.8発」という認識ですから(笑)。たまたま仕事がいろいろ重なった時、一瞬だけ月の収入がコンビで1000万円を超えたことがあるぐらいですよ。
テリー 十分すごいじゃない! それはいつ頃?
山田 2008年です。この前、税理士さんに、今までの年収の資料を見せてもらったんですけど、思ったとおりその年が仕事のピークで、翌年からは信じられないぐらい落ちましたね。