テリー そんな大忙しの頃は、どんな心境だったのかな。「これ、いつまで続くのかな」とか、考えたことはあったの?
山田 そういう不安は常にありました。僕は毎日仕事が終わったあと、手帳に仕事の出来を「OK」「ダメ」って記録していたんです。仕事のピークが落ちてからは、やっぱり「ダメ」が多くなりましたね。
テリー その理由はわかっていたの。
山田 最初の頃は「ルネッサ~ンス!」「○○やないかーい!」と定番のネタをやるだけでワーッと盛り上がっていたんです。でも、そのうち、それだけじゃ済まなくなって、ひな壇でフリートークなんかを求められるわけです。そうすると、テーマや共演者などの状況もありますけど、不出来な時も増えてくるんですよ。
テリー まあ、そうだろうね。
山田 そうすると、少しずつ呼ばれる仕事の感じが変わってきたんです。芸人の戦場みたいなバラエティーの仕事が減ってきて、「人気者登場!」みたいな、出演することだけでOKみたいな、ゆるい現場が増えてきまして。その時は「ヤバい!」と思いましたね。
テリー でもさ、「ルネッサ~ンス!」も一瞬飽きられるかもしれないけど、あれはずっと続けたほうがいいよ。だって俺、今でも乾杯の時は「ルネッサ~ンス!」って言ってるよ。
山田 えっ、本当ですか?
テリー ホント、ホント。ちゃんとウケてるよ。
山田 ありがとうございます。実は5年ぐらい前に下北沢のおでん屋さんで友達と飲んでいたら、隣のカップルの男性がけっこうなテンションで「ルネッサ~ンス!」とやって、彼女に「恥ずかしいからやめて」「古い、古い!」って、めちゃめちゃ怒られていたんですよ。僕、その時は襟付きの服でもないのに、思わず襟を立てて顔を隠そうとしましたからね(苦笑)。
テリー アハハハ! それは確かにつらいわ。
山田 でも、確かにHGさんからも「あれは伝統芸にせなあかん」と言われたんですよ。「男爵、だんだん恥ずかしくなって、ルネッサンスの言い方、70%ぐらいになってきてるやろ。120%で言わなあかん」と。そう僕にアドバイスしたHGさんが、今はハードゲイの衣装じゃなくて、スーツを着て、普通に漫才やっているんですけど(笑)。
テリー いやいや、新しい笑いに挑戦するのもいいと思うよ。ほら、ムーディ勝山だって今、いろんなことをやってるじゃない。
山田 さすがテリーさん、一発屋の動向に詳しすぎますよ(笑)。
テリー 俺、大好きなんだよね。あと演出家だから、人気が落ちた人がどう盛り返すのか、どうすればまた人気が出るのか、いつもそんなことばっかり考えているんだよ。ダンディ坂野やヒロシだって、最近はCMで復活してきているじゃない。新しい目線で見れば、そういうチャンスをつかめるんだと思うけどね。
山田 そういえば、僕は何年か前に「爆笑 大日本アカン警察」という番組でテリーさんと共演させていただいた時、僕がガーガーどなっているのを見たテリーさんが「おもしろい! これから男爵は、キレ芸でいけばいいんだよ」とホメてくださって、それが僕の中で大きなターニングポイントになったんですよ。テリーさんみたいな、ものの見方をしてくれる人が、もっと増えてくれるといいんですけどねェ。