歴史上の美女たちは食による下支えで、人生を謳歌してきた。「健康長寿」には、いつの時代も根拠がある。
「魏志倭人伝」によれば、2~3世紀に存在した邪馬台国の女王・卑弥呼が亡くなったのは、中国の正始8年(247年)前後。古代食に詳しい永山氏が言う。
「女王の座に就いた年代から逆算すると80歳前後まで生存していたことになり、大変な長寿なんです」
魏志倭人伝にはさらに、〈其人壽考或百年或八九十年〉(邪馬台国人は長命で、100歳や80~90歳の者もいる)と記されている。
確かめるすべはないが、大陸の人間から見た邪馬台国人は長寿に見えたようだ。
「魏志倭人伝に『倭の国は温暖で、冬も夏も野菜を食う』とある。野菜の摂取量と寿命は比例すると言われており、長生きに野菜は欠かせない。野菜に含まれているカロチンやビタミンCなどは病気に対する抵抗力を高め、体細胞の老化を防ぐ作用で知られている。野菜は長寿の薬と言っても決して過言ではない。ネギ、のびる、みつば、せり、はこべら、ゴボウ、栗、クルミ、豆類などを煮込んで、古代野菜汁として食したそうです」(永山氏)
健康長寿には野菜、それも旬の物をたくさん食べることを卑弥呼が教えている。
卑弥呼同様、野菜食で長寿だったのがテューダー朝最後の君主・エリザベス1世(1533~1603)だ。
「エリザベスの治世下はイングランドの国際的な地位を高めた時。1588年のスペイン無敵艦隊に対する勝利で英国史における最も偉大な勝利者、黄金時代の統治者として、たたえられている」(文学博士の吉川隆氏)
そのエリザベス1世が好んだ野菜料理は主にシチュー(ポタージュ)だった。
タマネギ、エンドウ豆、ホウレンソウ、カブ、ニラ、ニンジンなどとともに、この時代に登場した芽キャベツなどを煮込んだという。
「芽キャベツはビタミン類を多く含み、特にビタミンCはレモンの1.5倍、グレープフルーツの4.5倍、みかんの5倍もある。ビタミンCはコラーゲンの生成を助ける働きがあるので、美肌・美白効果はもちろん、活性酸素除去の手助けをする抗酸化作用、免疫活性作用もある。また芽キャベツのビタミンEは若返りのビタミンと呼ばれていますので、アンチエイジングにも効果を発揮します」(川田氏)
野菜パワーを見くびってはいけないのだ。
バイタリティあふれる女性といえば、徳川3代将軍・家光の乳母として名高い春日局(1579~1643)もそうである。
幼名・竹千代を名乗っていた家光は兄・長丸がすでに早世していたため世子として扱われていたが、病弱で吃音があり、容姿も美麗とは言えなかった。父・秀忠は、ハキハキし容姿端麗な弟・国松を寵愛していたとあり、春日局は駿府の家康に実情を訴えて家光の世継が決定したという。献身的に家光に尽くす中で考案したのが究極の健康食「七色飯(なないろめし)」だった。以下に全てを列挙しよう。
【1】赤小豆飯-赤小豆を炊き込んだ御飯。赤小豆の甘さがあり、ビタミンB1は糖質を燃焼させる。【2】湯取飯-炊き上がった御飯を水で洗い、ぬめりを取って再度蒸し上げたもの。さっぱりしていて食欲のない時にも食べやすい。【3】茶飯-抹茶を煎じた汁で炊いた御飯。お茶のカフェインで頭すっきり気分爽快に。【4】粟飯-粟は白米に比べ食物繊維7倍、カルシウム3倍、マグネシウム5倍、鉄分6倍、カリウム3倍。【5】引割飯-米を砕いてから炊き上げた御飯。一粒が細かく食べやすく消化にもよい。【6】麦飯-麦にはビタミンB1、B2、カルシウム、鉄分、食物繊維が豊富に含まれている。【7】乾飯-餅米を炊き、乾燥させて臼で砕き、熱湯をかけたもの。ふっくらとした食感。
栄養価が高い健康食をとっていた家光だったが、47歳の時、脳卒中で亡くなっている。一方、春日局は65年の人生を全うした。