──「帝王学」、政治哲学、政治手法‥‥何をいちばん叩き込まれましたか。
小沢 政治哲学です。僕は田中先生の他に竹下登(元総理)、金丸信(元副総理)という先輩に恵まれた。共通するのは「政治は万民のため」という哲学でした。これは身にしみています。
──田中さんから「これだけは守れ」と言われたことは何かありますか。
小沢 田中先生は、ああしろこうしろと言う人ではなかった。言うならば、自分の政治手法を「見て学べ」というものでした。そこで知ったのは、田中先生が利害調整の名人だったこと、物事の落としどころがキッチリ見えていた人だったことです。時代の見通しなど、物が見えるという直感力の鋭さも、また凄かった。日中国交回復への決断の速さと明確さ、あれはまさに、田中先生にしかできなかったことだと思っています。
──そうしたいわば先見力ですが、私は12年前の小沢さんへのインタビューを思い出します。その時にして、小沢さんは今日の朝鮮半島情勢を含めての東アジア、それに絡んでの米・中・ロの3国が中心になっての世界情勢の激動化、大変化を明言されていた。「角栄譲り」の直感力とも思われますが、さて、この国はこれからどこへ向かうと思われますか。また、政治家に何が求められるでしょうか。
小沢 どこへ行くのかわからないから困るんです。このままでは日本はアメリカの言いなりだということで、世界が相手にしなくなる。まず日本をどういう立ち位置の国にするか、トップリーダーに課せられた大きな仕事になるでしょう。
──最後に、小沢さんは政治家としての完結に向けて、何をやりたいと思っていますか。
小沢 最後の仕事は政権交代に尽きます。野党政権をもう一度作り、それを少し長続きさせる中で、なんとか自民党を立て直したい。僕は決して自民党不要論者じゃない。今の日本的、内向きな政党だけでは、これからはとても世界に立ち向かえません。外向きのオープンな政党が必要です。そのために野党を訓練して政権を取らせ、そのうえで新しい自民党を作ろう、と。それで僕の目標は達成でき、仕事は終わることになります。
──結集のため、野党のリーダーを説得する自信はありますか。
小沢 できると思います。やらなければ惨めになるのは野党ですからね。国民は腹の中では絶対に、自民党政権にものすごい批判を持っています。マレーシアのマハティール首相を見てください。実に92歳で野党連合を率いて、古巣の与党を倒したんです。元気だねぇ。僕も元気づきました。マハティールから見れば、僕はまだまだ子供みたいなもんだと思っています。
◆聞き手/小林吉弥(政治評論家)