五十にして天命を知る──。孔子の論語そのままに前人未到の領域へと踏み出す「球界のレジェンド」には、士気がみなぎっていた。趣味のラジコンとクワガタ飼育を封印、限界を超えた体を酷使し、プロ32年目にしてフォーム改造に着手。野望への壮絶な決意を語りだした。
山本 今季の成績が昨季のようなふがいないもの(3試合、1勝1敗、防御率4.50)だったら、「肩や肘は痛くないので、まだ投げられます」と球団にどんなに訴えたとしても、誰も納得してくれないでしょう。
── 昨年11月、契約更改後の会見で、山本昌(49)は「(来季限りで)9割方引退でしょう」と語った。今年8月には50歳になる。アサヒ芸能の直撃インタビューにもみずからの進退について、こう切り出すのだった。
山本 昨シーズンは中8日での登板が続いたけど、中6日でも十分投げられる自信はあります。だから、開幕から先発ローテに入り、2桁勝利を目指したいという気持ちはある。ただチームのバランスもあるので、具体的には最低15試合には登板して5勝をあげることが目標。一昨年の成績(16試合5勝2敗、防御率4.46)を超えることが現役続行のノルマになると思っています。それが達成できなかったら、普通に考えて引退でしょうね。
甲子園にも出場できなかったドラフト5位入団の選手が30年以上も現役を続けられたのは、運やツキ、周囲の人たちに恵まれたからです。今季、現役を続けられるのも一昨年のオフに落合博満GMから「給料は変えないから、杖をついてでも何とか50歳まで頑張れ」と直々に言われた言葉が大きな後ろ盾になったと思う。
40歳を過ぎてからは、「潮時かな」と思うことの連続だったけど、200勝(08年)、球団最多勝利(12年)、最年長勝利(14年)という節目の記録に、球団も「そこまで、もうひとふんばりしてみろ」と言ってくれて、こうした巡り合わせにも助けられてきました。
僕は歴代のプロ野球選手の中で最も幸せな野球人だったと思いますよ。それでも、球団から「もう契約しない」と言われるまで、現役を続けたいというのが本音なんです。それに、今、「辞めます」と自分から言ってしまうと、ダメな時にふんばりが利かなくなるから、自分の口からは「引退」とは言いたくない。成績がよければ「もう1年」となるのがプロの世界だし、そうなるようにしないとね。「最年長勝利記録も達成したし、もう十分だろう」と言う人もいるかもしれません。僕が現役にこだわるのは、チームの勝利に貢献し、優勝の瞬間をもう一度味わいたいから。
これまで日本シリーズには6試合に登板していますが、実は0勝4敗と未勝利なんです。CSが導入されて日本シリーズの価値が問われているけれど、昭和40年生まれの僕にとっては、憧れの舞台。その先発のマウンドに上がって勝ちたい、という気持ちはあります。