とはいえ、この官邸関係者がさらに言うには、
「北朝鮮対策に関しては、日米韓の中で日本は最も遅れています。日朝会談はまず外務省の課長が下交渉を始め、その後、局長、外務大臣、総理大臣の順に乗り出すという過程を経ることになります。本格的な交渉が進むのは会談実施に近づいてきてからになりますが、後回しにされるのでは、という懸念が残ります。さらに北朝鮮は、被害者が生きていたとしても、死んだという結論を持ち出し、解決に動くことも考えられる。米韓が対北融和政策に舵を切っている中で、アメリカの核の傘の中にいる日本の独自交渉は難航するでしょう‥‥」
そんな中、北朝鮮の国営ラジオ局が15日、「拉致問題は解決済み」との論評を展開した。従来の姿勢を再び表明した形だが、対日交渉を想定しての牽制の意味もあるとされる。
そして交渉の際に北朝鮮が要求するのが、拉致被害者を帰国させる「見返り」。すなわち、「経済協力」という名の解決金である。
だがそこに、先の米朝会談の重要課題である朝鮮戦争の終結が絡んでくるという。国際ジャーナリストが解説する。
「北朝鮮は日本に対しても、植民地支配に対する戦後賠償、すなわち経済援助を求めてくる。その額は膨大です。日本は自国の軍人恩給に、これまで80兆円を費やしている。それが指標となるほか、北朝鮮の論理で言えば、日本や韓国との緊張関係のせいで多額の軍事費を使ってきた、というわけです。そうしたものを合計すると、100兆円にもなるといいます。ただし、100兆円の現金を一括で渡すということではない。お金に相当するものを与えるのです。例えばプラント施設を建設したり、食料支援および食料作りの環境を整えたり。その支払いが始まった時点でようやく、戦後賠償問題解決のスタートとなる。それをもって没交渉、紛争状態でなくなれば、拉致問題が話し合われることになります」
この国際ジャーナリストは同時に、
「私も、めぐみさんは生きていると聞いた。北朝鮮が拉致被害者を表に出したくない理由は、内情を何もかもしゃべられると困るからです。だから、めぐみさんもこれまで出せなかった。しかし100兆円賠償が開始され北朝鮮が開放されたら、もうしゃべってもいいということになる。つまり、めぐみさんを出してもかまわない状況になるのです」
日朝首脳会談の実現にこぎつけ、拉致被害者を連れ帰ることができれば、安倍政権が抱える“モリカケ”疑惑などは全て吹っ飛び、支持率、人気は驚異的に回復するだろう。安倍総理も、自身の生き残りを懸けた大勝負に乗り出す必要に迫られている。