競馬界のアイドル・藤田菜七子騎手(20)が“夢の日本ダービー騎乗”に向けて、また一つハードルをクリアした。6月17日、東京3Rで通算31勝目(JRA29勝+地方のJRA交流競走2勝)を記録。JRA女性騎手として史上初のGI騎乗が可能になり、早くも秋のGI戦線にファンの注目が集まっている。
節目の勝利に王手をかけていた菜七子騎手が所属先の根本康広厩舎のベルクカッツェ(3番人気)でゴール板を真っ先に駆け抜けると、東京競馬場は拍手と歓声に包まれた。
スポーツ紙記者が話す。
「午前中の平場のレースとは思えないほどの盛り上がりでしたね(笑)。4角8番手から最速の上がりで飛んできての鮮やかな勝利。記者席からは『うまくなったなー』という声が聞かれました」
追い方が以前とは異なり、上手になった、と続けて賛辞を惜しまない。
「道中でのムダな動きがなくなりましたね。最後の直線で外に持ち出すのをギリギリまで我慢して、すぐにエンジンを全開にするのではなく、ギアをシフトアップさせていく感じ。以前のような『追う』と『叩く』が別々の動きではなく、連動していました。それが最後の伸び脚につながったのでしょう」
師匠である根本調教師も、今回の騎乗ぶりを次のように振り返る。
「うまく自分のペースを守って乗れていた。人気を背負って勝つのは、乗り役にとってはプレッシャーになる。気持ちの部分でも着実に成長している」
ただ、この勝利で菜七子騎手のGI騎乗が可能になった話に及ぶと、
「簡単に乗せてもらえる世界じゃない!」
と、報道陣をピシャリと制したという。
菜七子騎手もまた、師匠と同じ思いのようだ。スポーツ紙記者記者が話す。
「カメラマンから通算31勝の記念ポーズを求められた際、拒否していましたからね。『GIは甘い世界じゃないと思っています。もっと騎乗技術を上げていかないと』と話していたように、31勝で浮かれている場合じゃない、という思いだったのでしょうね」
確かに、騎乗技術については「まだまだ」との声も少なくない。美浦トレセン関係者もこう話す。
「これまで中央で馬券になっている競走条件は、1000万下まで(6月17日終了時点)。重賞(7回)どころか、オープン(4回)や1600万下(12回)のレースでも3着以内に来たことがない。まだ体力的に非力で、馬を抑えきれないんでしょう。だから、前に行ってもペース判断が甘くなるし、後ろからでは馬群を割れないという弱みもある」
その典型的なレースが、1月21日の中京9R(ダ1400メートル)や、1月8日の中山7R(ダ1200メートル)だった。
「中京は、ヒルダ(1番人気)とのコンビで好スタート。しかし、行きかけたところで迷い、中途半端に他馬と並走して4着に終わった。中山のビックリシタナモー(2番人気)は、もともと末脚が武器の馬。この時も最後方に近い位置から外を回して一気に差し切りましたが、このように彼女の場合、前残りか、直線一気の騎乗パターンしかない。トップ騎手たちのように馬群を上手にさばいて、というイメージは、ないですね」(美浦トレセン関係者)