ただ、お世辞にも、まだ「腕達者」と呼ぶには早すぎるようにも映るが、スポーツ紙記者によれば、
「今は逃げるか、外から追い込むか。馬群を割って抜け出してくる技術はまだまだですね。過去に、馬を抑えきれずに落馬したことがトラウマになっているのかもしれません」
しかし、スタートセンスは、デビュー時から非凡だったという。
「所属先の根本厩舎では、85年の桜花賞を快速娘エルプスで制した木藤元騎手が調教助手をしていて、スタート時の手綱さばきだけではなく、ゲート内でのたてがみの持ち方、馬をリラックスさせるテクニックなどのアドバイスをもらっていました」(スポーツ紙記者)
師匠である根本調教師も85年天皇賞・秋で大波乱を演出するなど、名ジョッキーとして活躍した一人だ。
「皇帝シンボリルドルフをギャロップダイナで大外から一蹴した名手。87年にはメリーナイスでダービーも制しています。菜七子騎手は、そうした名手たちに囲まれているだけに、まだまだ逃げも、追い込みの腕も磨かれると思いますよ」(スポーツ紙記者)
専門紙トラックマンも、「菜七子ちゃんは、すごく向上心が旺盛です」として、ふだん見せない裏の素顔をこう明かす。
「武豊(49)や福永祐一(41)といった一流ジョッキーたちにも臆することなく、質問をぶつけている姿をよく見ます。菜七子ちゃんは逃げる競馬をすることも多いのですが、ただ逃げるだけでは勝てませんからね。ペース配分や息の入れ方などを聞いているみたいです」
そうした努力のかいもあり、勝ち鞍を伸ばしている一方、心の面では課題も。
5月16日、美浦の奥村厩舎の新人歓迎会の席で、奥村武調教師(42)と膝を突き合わせて何やら話し込んでいたが、その中身をトレセン関係者が振り返る。
「先生から『もっとポジティブに競馬と向き合ってみては?』という旨のアドバイスをもらっていました。彼女の口癖は『すみません』なんですが、先生の『スタッフにも“すみません”ではなく、馬のよかった点を報告するといいんじゃないか』『競馬が好きであれば、乗っていくうちに技術は身につく。もっと楽しく乗ったほうがいい』という言葉に、菜七子ちゃんも納得しているようでした」
奥村師の助言の効果か、3日後の新潟で1カ月ぶりに勝利を飾っている。