以下、小峰医師の解説を聞こう。
「実はこのエナメル質はガラスのように傷がつくとヒビが入り、非常に割れやすくなる性質がある。そのため、虫歯を削ると目に見えない無数のヒビが入り、そこに金属で詰め物をするとくさびとなって、一気に歯が割れてしまうことがあります。つまり歯を削れば削るほど、歯そのものの寿命が短くなるということです」
確かにガラスに金属のくさびを打ち込めば、粉砕されるはず。それが口の中で行われているのだ。
現在、日本の歯科医で行われる虫歯の治療は、【1】虫歯菌に冒され、柔らかくなってしまった部分を削り取る【2】虫歯が広がるのを防ぐため、虫歯になっていない健康な部分も削り取る【3】金属やセラミックを詰めたり、かぶせものをして終了、というのが一般的な流れである。そして当然のことながら、治療の際には医師から、うがいをするように促される。ところが、
「唾液の中には700種類以上の細菌が存在しています。そんな細菌だらけの口でうがいをしたらどうなるか。剥き出しになった神経象牙細管から無数の菌が入り込み、さらなる虫歯や歯の神経の炎症を引き起こしてしまうんです」
しかも、治療に用いる歯科用タービン(ドリル)は使用する際に水と空気を使うため、患者の血液や唾液の飛沫発生は避けられない。タービンは停止する瞬間、水が垂れないように水を吸い込む構造になっており、停止時に吸い込んだ水や機械の中に残った水に病原菌が含まれ、それが歯科ユニットの配管を汚染しているというのである。
「ある調査によれば、下水の細菌数が約1万個なのに対し、歯科ユニットのチューブから検出された細菌数はフッ素コートチューブで10万個。ウレタンチューブでなんと1000万個。つまり数値的に見れば、下水のほうがきれいだということ。そんな水で削った部分が剥き出しになったまま、蓋をしない細菌だらけの口をゆすいでいる。これは傷のある体でドブ川を泳がせていることと同じ。その傷口に無数の細菌がくっつき、体内に入り込み、病気を引き起こす。これが実態なんです」
生々しい傷口をドブ川の水で洗い流すとは、想像しただけでも恐ろしくなるが、削られた歯はエナメル質にヒビが入って、もろくなる。では、そんな状態で神経を抜いてしまうと、どうなるのか。実際、記者も治療中にさんざん周りを削られ、神経を抜くハメになった。
「神経というのは歯の中を通っていて、歯に必要な栄養や水分を運ぶ働きをしています」
だから神経を抜くという行為は、この大切な運搬ルートを遮断してしまうことになるのだ。