「基本は患者さんの食生活を聞いて、気がつかないうちに口にしている砂糖を見つけ、やめていただくこと。これで虫歯の90%は防げます。さらに歯周病の患者さんには炭水化物を控えていただくことで、症状の改善に導いています」
ただし、治療しても歯周病が改善しない場合は、他の病気が潜んでいることが考えられる。
「歯周病が悪化したら、ガンを疑うべき。健康的なスポーツマンでも、歯周病治療をしてよくならない場合は、極端に免疫力が下がっている証拠。口臭も免疫力低下のサインです。歯や口の中の病気は、大病の前の未病の状態であり、体の病気が始まりかけているサイン。つまり歯が痛くなるというのは、体が発する警告なんです」
歯と体は密接な関係を持っている。その証拠に、虫歯が多い人は血管が老化している傾向にあり、
「虫歯が20本を超えると、実年齢との差が25~30歳と、大きく上回っていることもわかっています」
また、リウマチの患者が歯の根っこを治療後、症状に改善が見られたり、ガンを宣告された患者が歯を治したことでガンが消えた、という事例もあるという。
「人間には自然治癒力が備わっています。ですから生活習慣病同様、歯が悪くなる理由は全て食生活。食生活を改善すれば、必ず歯の病気は改善する。具体的には、糖質をコントロールし、アルカリ食品を多く摂取し、早食いをしない。また、骨にいいからと、カルシウムを摂りすぎるのも逆効果。通常、血液中のカルシウムa濃度は10~10.7ミリグラムと決まっていて、これより多くても少なくてもダメ。カルシウムの摂りすぎは歯周病の原因になるだけでなく、骨粗鬆症を引き起こす原因にもなるということも覚えておいてください」
17世紀にフランス王国を支配した「太陽王」ことルイ14世は、人生の大半を歯痛に悩まされ続け、その結果、「歯は全ての病気の温床である」として、全ての歯を抜いてしまったと言われる。そんなこともあり、同時代に初めて歯科医という職業が誕生。ただ、当時は悪質な「歯抜き屋」が横行していたという。
以来、数百年の歴史が流れてもなお現存する「歯抜き屋」まがいの歯科医。そんな歯科医から身を守ることこそが、大切な歯を失わない知恵なのかもしれない。