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遺骨や遺物を巡っては、遺族やアレフは重大な選択を迫られる可能性もあるという。
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第一に麻原の家族は、表向きはアレフに関わっていない、籍を入れていないことになっていて、教団施設とは別のところに住んでいます。しかし、遺骨や遺品の相続権となれば、妻を中心として、次に子供たちにある。彼らがそれを教団に提供するなどしても、麻原仏舎利を納める麻原仏塔が作られ、それを信者が参拝すれば、教団と関係ないと主張してきたこれまでのスタンスと矛盾する。社会的に非常に注目される中でどうするのか。極秘に分骨するのか。
そして、今現在、麻原の妻と子供たちの社会的なスタンスはまちまちです。例えば、麻原の妻とその下にいる次男に関しては、アレフを裏から支配していると言われている。その妻らと数年前から対立関係になったのが、三女(著述家・松本麗華氏)や長男たちで、妻などのアレフの体制派に批判されたあと、アレフ本体から一線を引いた。同時に三女の考えに同調した者たちもアレフから排除されたり、出たりした。一方、麻原・アレフを否定していると思われるのが四女、そして長女。特に四女は麻原と縁を切りたいと裁判までやって、それが認められた。
そして、ここが重要なところなのですが、麻原の執行後の遺品、特に著作権の取り扱いが大きな意味合いを持ってくる。先に述べたように、遺品・著作権は妻、そして子供たちにあります。アレフというのは麻原の教えが絶対で、それ以外に教本・教材がない。著作権法によれば、アレフが今後も麻原の教材を使うためには、原則として、相続者全員の同意が必要だと思います。社会的に非常に注目される中で、妻は、実際に批判の矢面に立って同意するのか。アレフを批判している三女らは、同意しないのか。
しかし、四女らは、同意するとは考えられない。特に、四女が麻原と縁を切る裁判をやった際の弁護士は、あの滝本(太郎・オウム被害者、オウム脱会信者支援者)さんです。彼は以前から著作権の問題がアレフを抑制する重要な鍵だと主張してきました。仮に、アレフが麻原・オウムの教材を使えなくなると、布教の手段や主たる財源を絶たれることになり、アレフは先細りの道に入る可能性があると思います。さらに、今年になって、アレフに対しては、被害者団体が、オウム事件の損害賠償として10億円を求める裁判を起こしました。
これは伝聞情報であって、直接は確認しようがないのですが、2年ほど前から、アレフのある幹部たちが、自主解散をする考えを持っているという情報があります。これは地下に潜る、偽装解散とも解釈できる。そうすれば、賠償金も払わなくて済むし、著作権侵害も隠しやすい。あくまでも、一つのプランだという情報ですが。
とはいえ、地下に潜ったとしても、狂暴化するかと言われると、それは疑問です。生き残りの手段にすぎないと思います。
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きわめて冷静にオウムおよびアレフの現状を分析する上祐氏。しかし、麻原と同時期に死刑執行されるとも観測されている12人の元幹部については複雑な胸中を明かすのだ。
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一つ間違えば、私は彼らの立場になっていた。彼らの執行に関して言葉で言い表すのは難しいというか、実に複雑な心境です。その中で、彼らの分まで再発防止や被害者の方々への賠償金の支払いを進めていくこと。それしか言いようがありません。
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オウム裁判が終結し、麻原をはじめとした死刑囚たちの死刑が執行された中、事件から23年が経過してもなお、未曽有の事件が起こした傷痕が、今も塞がれることはない。
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※本記事は週刊アサヒ芸能7月12日号(7月3日発売)に掲載