くだんの「手配書」は「グループLINE」を介して、裏社会にあっという間に拡散されたという。40代の現役組員が語る。
「組員のLINEへの依存度はかなり高い。組内の通達事項は全部LINEで、なんて組織もあるくらいだ。もちろん、身内だけで情報を回しているわけじゃない。対立する組織同士でも、意外と末端の構成員たちはLINEで連絡を取り合っているくらいだからね」
小川氏も、現代の組員たちのLINE活用法の一例を挙げて、
「例えば、裏カジノでイカサマをする客がいたとして、防犯カメラの映像から抜いた顔写真を、LINEで回して『こいつ知らないか? 300万出すぞ』とやる。そんなことがもう当たり前になっていますね」
かくして組織の垣根を越えた闇の「樋田捜査網」が敷かれる運びとなったのだ。
ヤクザ事情に詳しいジャーナリストが言う。
「『これはカネになりそうだ』と思ったら、そのネタのウラを取るスピードは早く、行動を起こすのに迷いはないでしょうね。今回の樋田の件で言うと、実在する会社が300万円という金額を提示していて、イタズラでないことはわかっているのだから、動いている人間は相当いると思います」
では、実際にどうやって樋田容疑者に関する情報を集めているのだろうか。
「警察が聞き込みできないような、地元の裏カジノや風俗店のスタッフに念を押しておくことは容易でしょうね。『コレに似た男が来たらまず俺に連絡してくれよ』と。また、半グレ連中を使って野宿できそうな場所を洗い出したり、脱走犯の知り合いを見つけて、何か情報を引き出すこともできるはず。また、樋田は変装の名人だそうですが、ちょっとくらいのカモフラージュではヤクザの目はごまかせないでしょうね。情報収集能力において、ヤクザの右に出る者はいません」(ジャーナリスト)
現職警官にはマネできない“便乗捜査”に期待を寄せる声は多い。
「もちろん全員がカネ目当てで動いているわけではないだろう。04年に奈良で起きた小1女児殺害事件でも、義憤に駆られた組織が独自に“捜査”を始め、警察よりも先に犯人像にたどりついたという話もあるくらいだ」(現役組員)
8月31日現在、樋田容疑者の行方は杳として知れない。大阪府羽曳野市や、兵庫県尼崎市で「それらしき男」の目撃情報が報じられているが‥‥。
「実は脱走の翌週、大阪府警では捜査員を増員して、一気に決めようとする動きがあった。確度の高い“いい情報”を入手したんでしょう。でも、結局は空振りに終わった。こうなった以上、さらなる長期化は必至。目撃情報や防犯カメラの映像などを逐次開示して、二次的な被害を起こさないようにする、といった捜査体制の変更も考えるべき」(小川氏)
先に樋田容疑者にたどりつくのは大阪府警か、それとも‥‥。一刻も早い逮捕が待たれる。