手紙のやりとりをしなくなって久しい、という方は多いのでは。中には礼状も年賀状もメールで済ますという人もいるかもしれない。しかし、1日数分でもペンをとろう。脳を刺激し将来の認知症封じにもつながるのだ。
ロングセラーになっている「できる人の話し方」など説得についての著作の多いケビン・ホーガン(ミネアポリスのセント・トーマス大学教授)心理学博士が、ハーバード大学の学生を対象に10年にわたって行った追跡調査の結果が話題を集めている。その内容はこうだ。
「自分の人生の目標を紙に書き出していた卒業生はわずか3%だった。そして、この3%の人々か何と残り97%の人たちの収入すべてを合わせても及ばないほどの額のお金を稼いでいた」
この差は“書く”ことで生じていたというのだ。
「紙に書き、思考の外在化をした人たちが成功できたということです」
ケビン・ホーガン博士は言う。文章を書くメリットはいろいろ言われ、論文も出ているが、文字を書くだけで脳を刺激し、健康効果は高いとも言うのだ。脳神経外科が専門の近藤利隆医学博士が言う。
「文字を書く行為は指先を繊細に動かす。それで脳は集中する。それがキーボードを打っても脳への刺激は少ないんです」
指先を動かすためには、かなり繊細に脳から指令を出す必要があるのだが、キーボードを打つのは、単にボタンを押しているだけなので繊細な動きは必要ないのだ。指は「第2の脳」とも言われている。繊細な指先の動きは脳の血流を良くする。そしてこの大脳の活性化が認知症予防につながると注目を浴びている。
「脳への刺激として、書くという行為ほど即効性のあるものはない」(近藤利隆医博)
こまめにメモをとる人は認知症になりにくいとも言えるのだ。毎日少しは何か書く習慣をつけようではないか。
(谷川渓)