スポーツ

追悼・輪島 黄金の左で投げ飛ばした波乱万丈70年(3)天真爛漫さはミスターと双璧

 土俵の上では鬼神のごとく猛々しい表情で勝負に挑んでいた輪島だったが、いったん土俵を下りれば、そのキャラクターで、記者や角界関係者からも愛された。スポーツ紙デスクが言う。

「あれは大関昇進の時です。協会の使者に口上を述べる際、『謹んでお受けします』と言ったものの、あとが続かない。しばらく考えたあと、『えっと、次何と言うんですか』と親方とやって、花籠部屋の会見場は爆笑の渦に包まれた。本当に憎めない人でした」

 かと思えば、横綱昇進の際は「稽古に精進します」などの言葉はなく、

「僕なりにマイペースにのんびりやります」

 とコメントするなど、元祖オレ流を貫いていた。

 当時、伝統と形式を重んじる角界にあって、輪島は規格外だった。言葉遣いひとつとっても「稽古」ではなく「練習」という言葉を使う一方、四股やテッポウといった稽古よりもタイヤを引きずって走るトレーニングを重視した。

「稽古のやり方からして、今までのものを否定したんです」(スポーツ紙デスク)

 華々しい成績とは裏腹に、金星を数多く献上したのも、記録ではなく記憶に残る名横綱ならではと言えよう。36個目の金星を配給した時のことである。

「NHKのアナウンサーが取組後のインタビューで『あの黄金の左はどこへいったんでしょう』と突っ込むと、輪島は『まだ、まだ健在です。昔は左でしたが、今は金星を与えるので、黄金の左と呼ばれています』と切り返した。アナウンサーは二の句が継げなかったそうです」(スポーツ紙デスク)

 おちゃらけているのではなく、本人はいたって真面目。どこか、球界のミスターこと長嶋茂雄氏の語録を聞いているようである。それだけではない。古参の相撲記者が明かす。

「知人から銀座の簡易公衆電話に電話がかかり、通話制限時間が迫った。相手がもう切れると伝えると、大丈夫、こっちから10円入れるからと答えた。トイレ(WC)とCMを混同したり、辛子明太子を『さちこめんたいこ』と思い込んでいたり、『オレは猫背だから、熱いものは食べられない』と真面目に言い放ったこともある」

 ベテラン相撲記者が、プロレス界にデビューする前後のエピソードを紹介してくれた。

「ある友人の家に呼ばれていった時のことです。冷蔵庫のもの、食べていいよと言われて食べたのが、なんとキャットフード。友人は『これ、キャットフードだよ』と驚いたが、おいしいねと平らげてしまった。本人はキャットフードをコンビーフと誤解している様子でした。全日本プロレスに入団して馬場家に招待された時も、元子夫人に『輪島さんは何がお好き?』と聞かれ、すかさず『キャットフードです』と答えている。これには、苦笑いするしかなかったそうです」

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
暴投王・藤浪晋太郎「もうメジャーも日本も難しい」窮地で「バウアーのようにメキシコへ行け」
3
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
4
侍ジャパン「プレミア12」で際立った広島・坂倉将吾とロッテ・佐藤都志也「決定的な捕手力の差」
5
怒り爆発の高木豊「愚の骨頂!クライマックスなんかもうやめろ!」高田繁に猛反論