大手通販サイト「ZOZO」の前澤友作社長がテロリストへの身代金支払いを巡り、日本維新の会・丸山穂高衆院議員とツイッターで激論を交わした。前澤氏は戦場ジャーナリストの安田純平氏が3年4カ月ぶりに内戦下のシリアから解放されたことを受け、10月26日にツイッターを更新。身代金の支払いがテロリストの資金源になるとの見方を「近視眼的な考え」と批判し、テロ問題の解決は「話し合いだと思う」との持論を語り、「非武装の状態でテーブル上で議論してみることはできないだろうか」と提案した。
その前澤氏に対して丸山議員は「あまりにも無邪気」と批判のツイートを投下。そこからおたがいに舌戦を繰り広げるものの、前澤氏が「今後は一市民を小馬鹿にしたような発言は謹んでいただくようお願い申し上げて終わりにします」と一方的に話を切り上げたのである。この一連の発言が前澤氏にとって大きな逆風になる恐れをはらんでいると、週刊誌記者が指摘する。
「問題は前澤氏が海外進出に意欲的な点にあります。ZOZOではすでに世界進出をもくろんでいますし、前澤氏自身は米スペースX社の月旅行計画に第一号顧客として参画を表明したばかり。それに絵画コレクターとしても知名度が上昇しており、経営者としても個人としても海外からの注目度は大きく高まっています。その立場で『テロリストに身代金を払う』『テロリストの要望を聞く』といった主張を繰り広げたのは、もはや自死行為と言えるレベルの大失策ではないでしょうか」
日本では今回の安田氏解放が大ニュースになっているが、アメリカではテロリストによる誘拐ははるかに日常茶な出来事だ。2001年以降、200人を超えるアメリカ人が誘拐されており、殺害された例は40件を超えている。そのためテロリストに対する意識も日本とは大きな違いがあるという。
「アメリカ政府ではテロリストに対して『ノン・コンセッション』(譲歩しない)という政策をとっています。身代金の支払いがアメリカ人を誘拐する動機づけになることを防ぎ、テロリストの資金源を断つことが目的です。そしてアメリカ人自身も世界最大の軍隊を抱える大国の国民として、テロリストに対しては厳しい態度で臨むという考え方が一般的。その状況で、世界から《テロから縁遠い安全な国》と思われている日本の大富豪が『身代金を払わない政府に疑問』という考えを表明することは、あまりにも的外れで危険な考え方に見えてしまいかねません。そんな能天気なお金持ちが、アメリカを象徴する民間月旅行計画の第一号になることに対して、大きな反発を生む恐れもあります。前澤氏は今後、『世界を相手に商売する企業』を率いることの責任を自覚せざるを得なくなるかもしれませんね」(前出・週刊誌記者)
前澤氏の発言はいまのところ、欧米メディアにはあまり取り上げられていないようだ。しかしZOZOが本格的な海外進出を果たした際には、その発言が海外投資家から注目されるのは確実。その時にも今と同じスタンスを取り続けられるのか。前澤氏自身が「ZOZOのリスク」になってしまう日も近いのかもしれない。
(金田麻有)