肥満になると、ガンになりやすくなる‐その原因の一部が解明されたと北大の研究グループが発表した。今年4月24日のことだが、発表したのは北大遺伝子病制御研究所の研究グループ。
同グループは、ガン細胞が発生するかなり前の段階で「ガン予備軍の細胞」が周囲の正常な細胞層によって押し出され、体外に排除される仕組みを証明していた。
今回の実験では、高脂肪のエサを与えてマウスを太らせ、「ガン予備軍の細胞」をさまざまな部位に発生させた。
すると、膵臓と小腸で「ガン予備軍の細胞」を体外に押し出す仕組みが抑制され、体内に残った。特に膵臓では増殖し、1カ月後に小さな腫瘍の塊になったというのだ。
以前から肥満とガンとの関連の研究は進められていた。世界で最もよく知られ、最も評価の高い世界五大医学雑誌の一つで、編集室をロンドンとニューヨーク市に持つ「THE LANCET」(2014年Vol.384)に〈太っているとガン発症リスクが50%以上アップ。なりやすいガンは10種類以上〉という論文も掲載されていた。
この論文によれば、英国の542万人を対象に調査。英国で発症が多い22のガンに関して、BMIとの関連性を調べたという。
BMIの数値が5上昇すると、ガン発症リスクが胆道系ガンで56%上昇。食道の腺ガンが53%上昇。男性の結腸ガンが30%上昇。腎臓ガンで男性の場合24%上昇。多発性骨髄腫、12%上昇。膵臓ガン、10%上昇…。といった具合にガンと肥満の関係が実証されていた。
ちなみに一般的に言われている標準はBMI18.5~25未満。25以上は要注意。30以上は危険水域に入っているのだ。 北大の研究班によれば、研究過程で次のようなこともわかったという。
〈肥満状態のマウスに抗炎症剤のアスピリンを投与して脂肪細胞の炎症を抑えると、がん細胞の発生そのものが抑えられる〉
そして、ガンを発症する前の人に、予防的な治療を行える道が開けるかもしれない、とも話している。
朗報だが、先のことになるこの治療。今は、目の前の肥満解消が先決だが、管理栄養士の柴田久美子さんがこうアドバイスする。
「まず食事の管理です。私たちは外食やコンビニ食、またスーパーやデパートの惣菜に頼る食事等、太ってしまう生活と常に隣り合わせです。伝統的な和食を見直すべきです」
柴田さんの言う伝統的な和食とは一汁一菜~二菜が基本。ご飯、味噌汁に納豆などの発酵食品を含む数品のおかずをプラスしたものをいう。さらに言えば食べ過ぎ、栄養の摂りすぎにも注意が必要とのことで、やはり肥満を避けるに越したことはないのである。
(谷川渓)