しかもその先には、アマチュア相撲をオリンピック競技に、という壮大な野望があるという。
「貴乃花自身は、相撲については伝統を重んじているものの、グローバルスポーツとして世界に広めたいというのが夢としてあった。しかし、相撲協会に在籍していては、スポークスマンとしての役割はおのずと制限がある。しかもアマチュアと相撲協会は一線を画していて、交流がないのが実情。ところが、今回の退職で、かつての夢がまたムクムクと頭をもたげてきたようです。そのためには、全国で減少している土俵の復活や新規の土俵の建設なども手弁当で行わなければならない。そのため、テレビ出演は貴重な“活動費”稼ぎとなる。その先では相撲のオリンピック化がライフワークになりそうです」(支援者)
まさに有言実行で、政治家やタレント転身の誘惑を断ち切り、みずからの相撲道に邁進する道を選んだのだ。
だが、貴乃花を取り巻く状況は必ずしも楽観視できるものではない。角界関係者も貴乃花の今後を危惧する。
「一番の心配な点は、やはり経済的な面です。相撲協会の退職金は恐らく2000万円ほどですが、貴乃花自身はかなりの蓄えを部屋の運営に使ってしまっているので、なかなか厳しい状況に変わりはない。そうでなくても相撲協会からの給与だけでは足りずに、妻の景子さんが講演料やイベントの出演料を差し出していたほどです。それだけに今後、アマチュア相撲の振興のために全国を奔走したい意向の貴乃花にとって、テレビ出演のオファーは拘束時間も長くないので、願ったりかなったりなんですよ」
一時は、相撲協会へのリベンジに労力を費やしていた貴乃花だったが、退職のきっかけとなった弟子の貴ノ岩の日馬富士に対する損害賠償請求も、モンゴルの家族が嫌がらせを受けているからという理由で、10月30日に取り下げたばかり。
「当初、貴乃花は貴ノ岩裁判を皮切りに、徹底的に相撲協会を糾弾して相撲協会の体質を改善したいと敵愾心を燃やしていた。ところが、9月の時点で貴乃花が部屋を解散し、千賀ノ浦部屋に合流したことで、一気に訴訟取り下げの方向に進んだんです。貴乃花にしても長期に及ぶ裁判は、経済的にかなり負担。今後の活動の幅を狭める可能性もあったので、この貴ノ岩の判断で、貴乃花のハラは決まったと言える」(相撲担当記者)
実際、すでにアマチュア相撲振興のための活動はスタートしている。11月3、4日には「田川ちびっこ相撲大会」を表敬訪問。今後も地域のちびっこ相撲大会などにも声がかかれば積極的に参加する予定だという。