抗ガン剤の原料に使われたり、究極のダイエット食ともてはやされたり、これまでもキノコは人気食材だった。気温の低下する今が“シーズン”となるが、はたしてキノコを食すると、どんな健康効果が得られるのか。正しい知識を授けておきたい。
何も、高価なマツタケに手を出さなくてもよい。実は、手軽に求められるものにこそ、より「元気力」を得られるものが多い。それがキノコなのだ。
まずはシイタケ。どのように調理してもおいしく食べられる。その効能を「日本きのこセンター菌蕈研究所」(鳥取県鳥取市)の研究員が解説する。
「まず、シイタケは血液をサラサラにします。中に含まれるレンチオニンとグアニル酸には、血小板の凝集を抑える作用があるからです。そして、健康で丈夫な骨作りにも役立つ。ビタミンD2が豊富に含まれているので、カルシウムやリンの吸収を促進して、新しく丈夫で健康な骨を作るんです」
キノコ全体に言えることだが、不飽和脂肪酸や食物繊維を多く含むので、血中コレステロール値を抑えることができ、メタボ対策にもなるという。
「β‐グルカンと呼ばれる多糖類が含まれるので、免疫力を高め、アレルギーの予防や改善効果、抗腫瘍効果があると考えられています」(日本きのこセンター研究員)
事実、シイタケの菌糸体はガン治療にも使われている。付け加えれば、乾燥シイタケは食物繊維、カリウム、ビタミンD、葉酸のどれをとっても、生シイタケの約3~30倍も含有。スーパーなどでシイタケを余分に買った場合、乾燥させるのがいい。
抗ガン作用が大きいキノコといえば、えのきだ。えのきは「物価の優等生」とも言われて安価だが、その成分は優れている。
そもそも、きのこの抗ガン作用が本格的に研究されるようになったのは、えのきがきっかけだった。事情を知る、医療ジャーナリストの笹川伸雄氏が説明する。
「今から40年ほど前、長野厚生連・北信総合病院に赴任した医師が『えのきの栽培農家はガン死亡が少ない。キノコがガンに効くのではないか』と考えたんです。同病院と長野県農村工業研究所によって調査・研究が行われた結果、えのきには発ガン防止作用、ぶなしめじにはガン転移抑制効果が確認された。抗ガン作用のある、えのきのサプリも作られています」