先日、「テレビ東京55周年 テレ東ぜんぶ見る大作WEEK」と題し、「池の水ぜんぶ抜く大作戦」や「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」など、テレビ東京を代表する人気番組の特番を連日放送する、スペシャルな1週間がありました。で、その期間中、それらの人気番組のパロディを殿が好き勝手にやりきった、「いきなり、たけしです。」も、やはり連日放送されたのですが、「たけしとテレ東が組むと、やっぱり面白い!」「たけし、攻めてるな~」等々、大変大きな反響を各所からいただき、殿も、
「相変わらずたけしはバカだって、みんな喜んでたか?」
と“あれだけやったら、みんな満足したろ”的な感想を漏らしていました。
で、それぞれの番組の詳しい内容は、すでにネットにあがっている動画を見ていただくとして、わたくしが最も好きだった放送回は、殿がテレビ東京社長へ向けて表彰状を読み上げた「北野武とテレ東の社長」。そうです。たけしファンの間では、今やすっかりお馴染みとなった、特別な番組でしか披露しない、殿の表彰状芸です。かつて、「笑っていいとも」の最終回でタモリさんに向けて読み上げた“あれ”です。
2カ月程前、このたびの番組の打ち合わせが始まると、殿は早々に、「だったらあれだ。いつもの表彰状を作るか」となり、わたくしともう1人の弟子に、「いつものやるから、頼むな」と、オファーをかけたのです(表彰状は殿と弟子2人の3人で、毎回ゲラゲラ笑いながら作成しています)。
で、今さら弟子のわたくしが言うのもなんですが、殿はこういった、かしこまった言い回しに、きついジョークを入れ込むのが、恐ろしくうまい! という事実があるのです。
「表彰状」というくらいですから、しっかりと表彰する形になっていなければいけません。あの堅くかしこまった定番の文章が頭に入っていなければ、ちゃかすこともふざけることもできないわけで、定型にのっとって、ブラックジョークをはめ込んでいく繊細な作業になります。それでも殿はその手の堅い文章が恐ろしく正確に頭に入っていて、下書きなしに、口頭でいきなり、そこにふざけた文章を入れ込んでスラスラと作成させるのです。
わたくしも、今でこそ表彰状作成のコツがわかってきましたが、5年程前に初めて作った時はうまくできず、殿から何度も修正をされました。まじめな形にバカをはめ込むのは、難しいものなのです。
で、「いきなり、たけしです。」のオンエアを確認した殿に“わたくし調べ”による、評判や感想などをひととおり報告すると、一度ニヤッとした殿は、楽屋の鏡の前で、自身の姿を見ながら、
「まー、あーいうやり方は、もう俺ぐらいにしかできねーか」
と、長きにわたり、どんな状況でもテレビの中で遊びふざけまくる“たけしスタイル”について、改めて総括したのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!