5月中旬、生放送出演のため、楽屋に入った殿は、
「もらった賞状がかっこいいんだよ」
と、このたびの春の叙勲で、旭日小綬章を授与され、伝達式で頂いた賞状の感想をうれしそうに漏らすと、
「今回は反応がすごかったな。フランスの時よりすごくてよ、もーいろんな所からランの花がガンガン届いたよ」
と、かつて、シュバリエ(99年)やコマンドール(10年)、レジオンドヌール勲章オフィシエ(16年)をフランス政府から授与されている殿だからこその“対比的感想”を言い放ったのです。
で、こうなると楽屋はたちまち、春の叙勲の話題で盛り上がったのですが、5分ほどすると、殿がかなり唐突に、「次の映画だけどよ‥‥」と、次期北野映画の話を切り出し、もーそこから先は、完全に“映画監督・北野武”となり、映画のあらすじを語り出したのです。この時、わたくしも“叙勲から北野映画へ”と、頭の中を切り替えて対応していたのですが、あらすじをあらかた語り終えた殿は、かなり強引に、
「今、ダイエットしてて飯食えねーから、栄養のあるつまみで酒飲んでんだ」
と、今度はダイエットトークへと話題を切り替えたのです。正直、いつものことといえばいつものことなのですが、この日ばかりは、いつも以上に早いタイミングで話題を切り替えていた殿。こういった時は、大変機嫌がいい時です。で、わたくしがダイエットについて、2つほど質問をすると、“もう、その話はいいや”と言わんばかりに、
「おう、そういえば熊本ライブはどうなった?」
と、今度は9月開催が決定している「たけし単独ライブ・熊本ツアー」の情報を求めてきたのです。もちろん、殿の質問に即座に対応し、ライブの進展具合をお伝えすると、
「あれだな。くまモンに対抗して○○ってのもいいな」
と、ライブで着る可能性のある“着ぐるみ案”を提示するもすぐ、“もう熊本の話はいいや”とばかりに、
「事務所のホームページよ、いかにも浅草にいそうなインチキな漫才コンビの写真を載せるか」
と、ただ今絶賛作成中である、新事務所の“かなりふざけたホームページ”の話にズバッと話を移行させたのです。で、ホームぺージの話も5分ほどすると、
「ほら、前に言ってた○○○の話あったろ。あれ、こないだ書き上げたよ」
と、何の脈絡もなく、最新書き下ろし小説の話に切り替えたかと思えば、
「そうだ。こないだ収録中に歯が抜けちまってよ。大変だったんだよ」
と、こちらがズッコケるような自虐ネタを放り込み、本番前の打ち合わせへと突入したのでした。楽屋に入ってから、打ち合わせが始まる30分ほどの間に、春の叙勲。フランスからの勲章。北野映画。熊本ライブ。小説。そして歯抜け話と、テンション高くバラバラな話題を振りまいた殿。叙勲効果でしょうか? 何だか、ノッていました。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!