2歳牝馬の総決算ともいうべき阪神ジュベナイルFが今週のメイン。クラシック第1弾の桜花賞と同じ舞台、距離で争われる競馬だけに、ブエナビスタ、アパパネなど、ここで勝った勢いをそのままに桜花賞、オークスで勝ち負けする馬は少なくなく、ファン必見のGIと言っていい。
ただ、牝馬の多くは消長が激しく、これまでの成績から有力視されている人気どころが「あれっ」と思うほどもろく、敗れ去ることも少なくない。
それはデータをひもとけば、はっきりしていて、馬連が導入された91年以降、過去27年間、1、2番人気馬のワンツーで決まったのは、わずか1回のみ。大きく荒れることは少ないが、だからといって本命党向きの簡単なレースでないことも確かだ。
では今年の顔ぶれを見てみよう。一昨年の覇者でオークス馬となったソウルスターリングの妹シェーングランツが最右翼だろうか。前走、アルテミスSの勝ちっぷりは鮮やかで、姉以上の迫力を感じさせる。そのアルテミスSで僅差2着のビーチサンバも素質はかなりのもの。同じ前哨戦のファンタジーSをあっさりモノにしたダノンファンタジー、そして新馬──特別を連勝したクロノジェネシスといったところがシェーングランツに続く有力勢ということになろうか。
しかし他にも能力を秘めた馬は少なくない。狙ってみたいのはそんな1頭、ベルスールだ。
前走のファンタジーSで2着。前記した有力馬のダノンファンタジーに遅れること1馬身4分の3。あっさり差されたのだから一見すると完敗、力負けの印象を受けるが、見捨てるわけには断じていかない。
新馬戦を勝ち上がってから3カ月ぶりの実戦。前走比12キロ増の体重で出走だったことを思うと、むしろよく頑張ったものと、あらためてその素質の高さを見て取るべきだ。
道中、引っ掛かる場面もあって、リズムよく走れてはいなかった。これもレース間隔があいていたからで、直線は失速してもおかしくなかった。それでも踏ん張り切ったのだから、評価すべきである。
「ガス抜きできたのだろう。中間の稽古の動きが実にスムーズ。この分なら巻き返し可能だ」
こう厩舎スタッフが口をそろえるように、1週前の追い切りも軽快そのもの。仕上がりのよさは前走の比ではない。ならば期待できるのではないか。
父はスピード色が濃く、ベルスール自身、短距離馬のイメージを持たれそうだが、母の父はサンデーサイレンスで祖母の父ソーマレズは凱旋門賞、パリ大賞典の勝ち馬。マイル戦は何の問題もない。
さらに言えば、5代母はコロネーションCなどを勝利している。今で言うGI馬で、近親に全欧2歳女王マビッシュ(英1000ギニーなどGI4勝)がいる良血。血統的背景からチャンスは十分ある。
相手は当然、前記した有力どころになるが、抽選待ち(7分の3)の中にもおもしろい馬がいる。もし運よく出走枠に入ったなら、大いに注目してみたいのがコルデトゥリーニだ。
未勝利戦を勝ち上がったばかりだが、その勝ちっぷりが実によかった。手前を替えるのもぎこちなく、遊び遊び走っている印象。まだ幼い面を多分に残していながら、いざ追い出すと、あっさり後続を斬り捨ててしまうところがすごい。馬体はあか抜けており、素質はピカイチだ。
こちらは祖母が仏1000ギニー馬で、近親にサズルー(GIイスパーン賞)がいる血筋。ノビシロ十分の好素材だけに、一票投じていい馬だ。