通信業界のみならず一般のビジネスマンもその動向に注目しているファーウェイのCFO逮捕。中国最大手の通信機器メーカーを巡っては、アメリカ政府が日本を含めて同盟国に対して同社製の通信機器を採用しないように働きかけているが、その動きを報じる「news zero」(日本テレビ系)の報道姿勢が偏っているとして、視聴者を呆れさせているという。
12月11日の放送では番組終盤に「不思議なのは以前から使用されていたファーウェイの端末や基地局が、今になって急に危ういと?」という視聴者の声を紹介。ここで同番組のコメンテーターを務める日本テレビ解説委員・国際部デスクの小野高弘氏は「これは戸惑いますけど、言い始めたのはアメリカなんですよね。貿易でも知的財産の分野でも、中国に今、強烈なプレッシャーをかけ始めている」と解説した。
それを受けてメインキャスターの有働由美子が、「その外交のカードの切り方が逮捕ということだったんですけど、そこまで強硬にする理由ってあるんですかね」と訊ねると、「中国がそれだけ怖いんだと思います」と答えていた。このやり取りについて通信業界事情に詳しいIT系ライターがマユをひそめて言う。
「この解説だとまるで、中国相手に貿易戦争を仕掛けているアメリカが、今度は通信分野での覇権も握ろうとしているように聞こえます。しかしファーウェイ製機器の排除に関しては、次世代通信技術の『5G』におけるサイバーセキュリティが理由なのは明らか。そもそも携帯通信インフラでは首位のファーウェイ、2位のスウェーデン・エリクソン、3位のフィンランド・ノキアで市場の77.8%を寡占しており、アメリカ企業は出る幕がありません。それなのに貿易戦争と絡めてファーウェイ問題を語るのは、あまりにも偏った見方です。ファーウェイ問題はむしろ、東シナ海の人工島を巡る“航行の自由作戦”といった国防問題に絡めて語るべき問題ではないでしょうか」
そんなピント外れの指摘で番組を締めくくっていた「news zero」だが、同じ放送では別の見方も提示していた。ファーウェイCFOの逮捕を報じた場面では、中国情勢に詳しい大学教授がコメントを寄せており、そこでは軍に近い同社に関して「アメリカはファーウェイを民間企業と思っていない」「通信網を押さえられてしまうと、そこから情報が全部筒抜けになってしまう」などと、国防上の問題であると解説していたのである。
「この場面では小野解説委員も『アメリカが最も恐れているのは軍事情報が漏洩していくこと』『だから同盟国はファーウェイの製品をどうするのか迫られています』と、あくまで国防問題であることを説明していました。ところが番組のラストではそういった前提をすっとばして『中国に強烈なプレッシャー』などと言い出すのですから、これでは視聴者も混乱するに違いありません。しかも肝心の有働アナは場の整理をすることなく、ただコメンテーターに話を振り続けるだけ。この調子では世界情勢に関心の高い視聴者が『news zeroでは何の情報も得られない』とさじを投げても不思議はないでしょうね」(前出・IT系ライター)
最後はコメンテーターの落合陽一氏が「疑い始めたら疑心暗鬼です、全部」と諦め口調で語っていたが、その言葉を引き取ることもなく、有働アナは番組を締めくくっていた。この調子ではますます視聴者が離れてしまうのも疑いなさそうだ。
(金田麻有)